指導計画書とは?書き方に迷う理由と結論
「警備員指導計画書」を作ろうとして検索すると、教育計画書のような記入例がなかなか見つからず戸惑う管理者・指導教育責任者(警備員に対する指導・教育を統括する資格者)は少なくありません。理由は単純で、指導計画書には教育計画書のような記載事項の列挙が条文上ないためです。この記事では、指導計画書とは何か、教育計画書とどう違うのか、そして実務でどう書けばよいかを、根拠条文とあわせて整理します。
結論から言うと、指導計画書は警備業法施行規則66条1項4号に基づく営業所の備付け書類で、「警備員に対する指導に関する計画」を記載するものです。条文自体は記載事項を列挙していませんが、指導教育責任者の業務を定める同40条1号が「指導計画書を作成し、その計画書に基づき警備員を実地に指導し、及びその記録を作成すること」を義務づけているため、実務上は①対象警備員、②指導事項、③実施時期、④指導方法、⑤指導者氏名の5点を書き、実地指導のたびに記録を残す運用にすれば要件を満たせます。教育計画書(同項5号)とは根拠条文も記載事項も異なる別の書類なので、様式を1本にまとめて済ませることはできません。
指導計画書と教育計画書の違い
似た名前の2つの書類を比較すると、次のようになります(施行規則66条1項4号・5号、40条1号・2号、66条2項・3項に基づく)。
| 項目 | 指導計画書 | 教育計画書 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 66条1項4号 | 66条1項5号 |
| 対象 | 警備員への「指導」(現場での実地の関わり) | 警備員への「教育」(新任教育・現任教育) |
| 記載事項の条文上の列挙 | なし(「指導に関する計画」とのみ規定) | あり:実施時期・内容・方法・時間数・実施者氏名・対象警備員の範囲 |
| 備付け期限 | 条文上の期限規定なし | 年度開始30日前まで(66条3項) |
| 保存期間の起算日 | 実地に指導した日から2年間(66条2項) | 年度終了日から2年間(66条2項) |
| 作成・管理の責任者 | 指導教育責任者(40条1号) | 指導教育責任者(40条2号) |
実務でとくに見落とされやすいのが「備付け期限」の違いです。66条3項が定める「年度開始30日前までに備える」という期限は、条文上は教育計画書についての規定であり、指導計画書には同様の期限が明記されていません。とはいえ指導計画書も営業所への備付け義務自体はあるため、教育計画書を作るタイミングに合わせて指導計画書も一緒に準備しておくのが実務上は安全です。教育計画書の中身(新任教育20時間・現任教育10時間の考え方)は別記事で詳しく扱っていますが、時間数の一本化を含む改正の経緯は警視庁の案内でも確認できます。
指導計画書の書き方:記載する項目と記入例
条文に記載事項の列挙がない以上、書き方に唯一の正解はありませんが、40条1号が求める「計画→実地指導→記録」の流れを崩さないことが軸になります。具体的には、次の5項目を年間の計画として一覧化するのが実務的です。
- 対象警備員:氏名、または「1号警備(施設警備)従事者全員」のような対象範囲
- 指導事項:現場で確認・是正したい具体的な内容(巡回ルートの遵守、資機材の取り扱い、合図の統一など)
- 実施時期:月または四半期単位のめやす
- 指導方法:現場への同行・実地確認・個別面談など
- 指導者:指導教育責任者の氏名
1号警備(施設警備)と2号警備(交通誘導)を扱う営業所を例に、年間計画の記入例を示します。
| 対象警備員 | 指導事項 | 実施時期 | 指導方法 | 指導者 |
|---|---|---|---|---|
| 施設警備従事者(田中ほか3名) | 巡回ルート・出入管理要領の再確認 | 2026年5月 | 現場に同行して実地確認 | 指導教育責任者 佐藤 |
| 交通誘導従事者全員 | 資機材の配置・合図の統一 | 2026年8月 | 現場臨場での実地指導 | 指導教育責任者 佐藤 |
| 新任配属者(配属後3か月以内) | 現場ルールの再確認・質問対応 | 配属後1か月時点 | 個別面談+現場同行 | 指導教育責任者 佐藤 |
対象人数が多い営業所では、計画段階で年間の指導件数がどれくらいになるかを見積もっておくと、指導教育責任者1人あたりの負担が見えます。たとえば対象警備員が12名いる営業所で、1人あたり四半期に1回(年4回)ずつ実地指導を計画すると、年間の実地指導の件数は 4 × 12 = 48件になる計算です。これを指導教育責任者1人で回せるかどうかを、計画段階で確認しておくと年度途中の未達を防げます。自社の人数・区分に当てはめて様式を作りたい場合は、指導計画書テンプレートで対象人数と区分を入力すると、記入例つきの様式を無料で出力できます。
指導計画書を作ったあとにすべきこと
指導計画書は作って終わりではありません。40条1号は「計画書に基づき警備員を実地に指導し、及びその記録を作成すること」までを指導教育責任者の業務として定めています。つまり、計画どおりに現場へ足を運んで指導した事実と、その内容を都度記録に残すところまでが一連の義務です。記録には、指導した日付・対象警備員・指導事項・指導した場所・所見を残しておくと、あとから計画との対応関係を確認しやすくなります。この実地指導の記録をどう残すか、様式の考え方は「警備員指導実施簿」という名称の書類の正体を整理した記事でも扱っているので、あわせて確認してください。
自社で確認する手順
- 手元に「指導計画書」と呼べる書類があるか、それとも教育計画書を流用しているだけかを確認する。
- 計画に対象警備員・指導事項・実施時期・指導方法・指導者の5項目が入っているかを見直す。
- 実地指導を行うたびに、その場または当日中に記録を作成できる体制になっているかを確認する。
- 保存期間の起算日を「実地に指導した日」で管理し、教育計画書(年度終了日基準)と混同していないかを点検する。
- 指導教育責任者の選任状況や、40条が定める4つの法定業務の全体像を確認したい場合は指導教育責任者の選任義務と法定業務も参照してください。
誤解しやすいポイント
- 「決まった様式がない=作らなくてよい」ではない:記載事項の列挙がないだけで、指導計画書そのものの備付け義務(66条1項4号)は他の書類と同じくあります。
- 教育計画書の「年度開始30日前」ルールを指導計画書にも当てはめて考えてしまう:この期限は条文上は教育計画書(66条3項)の規定です。指導計画書に同じ期限はありませんが、備付け義務自体は年間を通じて必要です。
- 保存期間を一律「2年」とだけ覚えてしまう:起算日が書類ごとに違います。指導計画書は実地に指導した日から2年、教育計画書は年度終了日から2年です(66条2項)。
- 指導計画書を作れば教育計画書・教育実施簿は不要と考えてしまう:指導(66条1項4号・40条1号)と教育(66条1項5号・6号・40条2号)は別制度で、それぞれ独立して備付け・記録の義務があります。
このあたりの線引きに迷う場合は、詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。営業所ごとに運用の細部が異なることもあるため、自己判断だけで様式を固定する前に確認しておくと安心です。
日々の指導記録と教育記録をExcelや紙で別々に管理していると、警備員ごとの対応状況や保存期限の違いを追いきれなくなりがちです。指導・教育の記録をクラウドで一本化して管理したい場合は、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)で試すこともできます。
自社の様式をいま整えたい場合は、指導計画書テンプレート(記入例つき・エクセル対応)で、対象人数・区分を入力するだけで指導計画書の様式を無料で作成・印刷できます。
まとめ
- 指導計画書は施行規則66条1項4号の備付け書類で、「警備員に対する指導に関する計画」を記載する。記載事項の条文上の列挙はない
- 教育計画書(66条1項5号)とは根拠条文・記載事項・保存期間の起算日がすべて異なる別の書類
- 実務では対象警備員・指導事項・実施時期・指導方法・指導者の5項目を年間計画として書き、40条1号に沿って実地指導とその記録までを一連で行う
- 保存期間の起算日は「実地に指導した日」から2年間(66条2項)で、年度終了日基準の教育計画書とは異なる
- 判断に迷う点は管轄の公安委員会や社会保険労務士に確認し、指導計画書テンプレートで自社の様式を整えるとよい
よくある質問
Q. 指導計画書に決まった様式はありますか?
法令で定められた統一様式はありません。施行規則66条1項4号は「警備員に対する指導に関する計画を記載した指導計画書」と定めるのみで、記載事項の列挙もありません。実務では対象警備員・指導事項・実施時期・指導方法・指導者を含む形式が一般的です。
Q. 指導計画書と教育計画書は同じものとして扱ってよいですか?
扱えません。指導計画書は施行規則66条1項4号、教育計画書は同項5号に基づく別の備付け書類で、記載事項も保存期間の起算日も異なります。両者の違いは教育計画書と教育実施簿の違いを解説した記事でも扱っています。
Q. 指導計画書はいつまでに営業所へ備え付ければよいですか?
施行規則66条3項が定める「年度開始30日前まで」という期限は条文上は教育計画書に関する規定です。指導計画書に同様の期限は明記されていませんが、備付け義務自体は継続的にあるため、教育計画書の準備にあわせて整えておくのが安全です。
Q. 指導計画書の保存期間はいつから数えますか?
「実地に指導した日」から2年間です(施行規則66条2項)。教育計画書・教育実施簿の起算日(年度終了日)とは異なるため、まとめて管理していると保存期限を取り違えやすい点に注意してください。