「現任教育、結局いつ何時間やればいいのか」を先に整理する
新任教育は終わったものの、在籍している警備員に毎年度行う「現任教育」の年間計画をどう組めばいいか迷う——警備会社の管理者や指導教育責任者からよく聞く悩みです。年度末にまとめて詰め込もうとして間に合わなかった、という声も少なくありません。この記事では、現任教育に必要な時間数の根拠を確認したうえで、月ごとにどう割り振ればよいかを具体的な数字で示します。
結論:現任教育は毎年度10時間以上、四半期ごとに2〜3時間ずつ配分すると無理がない
結論から言うと、一般の警備員には警備業法施行規則第38条第5項の表1項により、毎年度(4月1日〜翌年3月31日)に基本教育と業務別教育を合わせて10時間以上の教育が義務づけられています。年度末に一度で消化しようとせず、四半期(3か月)ごとに2.5時間前後を目安に月へ割り振ると、繁忙期と重なって未達になるリスクを抑えられます。
ただし、検定合格や指導教育責任者資格の保有状況によっては時間数が変わります。まず自社の警備員がどの区分に当たるかを確認するところから始めるのが確実です。
現任教育の時間数は資格・経歴で変わる
施行規則38条5項の表では、対象となる警備員の資格・従事状況によって次のように時間数が分かれます。
| 区分 | 現任教育の時間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般の警備員 | 毎年度10時間以上(基本+業務別) | 38条5項の表1項 |
| 検定合格者を、その種別以外の警備業務に従事させる場合等 | 業務別教育6時間 | 38条5項の表2項 |
| 2級検定合格者を、その種別の警備業務に従事させる場合 | 業務別教育6時間 | 38条5項の表2項 |
| 1級検定合格者を、その種別の警備業務に従事させる場合 | 免除 | 38条5項柱書 |
| 指導教育責任者資格者証の区分と同じ業務に従事させる場合 | 免除 | 38条5項柱書 |
この時間数の内訳や軽減条件をさらに詳しく知りたい方は、現任教育は毎年度何時間?や現任教育が免除・軽減される警備員の条件にまとめています。なお、新任教育(採用時に行う教育)は原則20時間以上(38条4項の表1項)で現任教育とは別の枠組みです。年間計画を立てる際は、新任者と在籍者を混同しないよう区分しておく必要があります。現任教育が「半期ごと」から「年度ごと」の制度に変わった経緯は、警視庁の案内でも確認できます。
自社の警備員が資格・経歴の組み合わせでどの区分に当たるかは、条件を選ぶだけで判定できる教育時間チェッカーで確認できます。
年間計画の立て方:4つのステップ
1. 対象人数と区分ごとの必要時間を洗い出す
まず在籍警備員を「一般(10時間)」「業務別6時間」「免除」の区分に仕分けます。たとえば2号警備(交通誘導)の営業所に一般の警備員が5名、2級検定保有で同種別に従事している警備員が1名いる場合、年間の必要教育量は次のように計算できます。
- 一般5名:10時間 × 5名 = 延べ50時間
- 2級検定保有1名:6時間 × 1名 = 延べ6時間
- 合計:延べ56時間分の教育を年度内に実施する必要がある
この延べ時間数が、年間で確保すべき教育機会の総量です。
2. 教育事項を基本教育・業務別教育に割り振る
施行規則38条2項・3項が定める教育事項(基本教育=法令・護身術・応急措置など、業務別教育=従事する区分固有の知識・技能)を、10時間の枠に配分します。たとえば一般の警備員(10時間)なら、基本教育3〜4時間・業務別教育6〜7時間という配分が実務では目安にされています。
3. 月・四半期に割り振る
10時間を12か月で均等に割ると1か月あたり50分程度となり細切れで管理しづらいため、四半期ごとに1回、2〜3時間程度でまとめて実施する組み方が現実的です。一例を示します。
| 時期 | 教育の種類 | 想定時間 |
|---|---|---|
| 4〜6月(年度初め) | 基本教育(法令・心構え) | 2.5時間 |
| 7〜9月 | 業務別教育(現場対応) | 2.5時間 |
| 10〜12月 | 業務別教育(事故・トラブル対応) | 3.0時間 |
| 1〜3月 | 基本教育(総復習)+不足分の調整 | 2.0時間 |
繁忙期(年末年始・イベント警備の時期など)を避けて配置し、1〜3月に「調整枠」を残しておくと、年度途中の欠席や実施漏れをその期間で吸収できます。
4. 教育計画書に落とし込み、備付け期限を守る
組んだ年間計画は教育計画書として書面化し、年度開始日の30日前までに営業所へ備え付ける必要があります(施行規則66条3項)。4月開始の年度なら3月2日ごろが締切です。実施時期・内容・方法・時間数・実施者・対象警備員の範囲を記載します(66条1項5号)。
自社の状況を確認したい方は、年度・区分を選ぶだけで教育事項や必要時間が入った状態のひな形を出力できる教育計画書テンプレートを使うと、この書面化のステップを省力化できます。
誤解しやすいポイント
- 「年度」は暦年(1〜12月)ではない:現任教育の年度は4月1日から翌年3月31日までです。1月始まりで計画すると期間がずれます。
- 10時間の内訳を基本教育だけ・業務別教育だけに偏らせるのは避ける:38条5項の表は「基本教育と業務別教育を合わせて」10時間としているため、どちらかに極端に偏った計画は実施内容として不十分と見なされる可能性があります。
- 実地教育(OJT)による代替は新任教育の話:新任教育では業務別教育の一部を実地教育で代替できますが(38条3項備考。たとえば業務別教育6時間なら6÷2=3時間まで代替可)、現任教育の年間計画にこの代替を組み込めるかは条文上明確でない部分があるため、詳しくは実地教育による代替の上限や管轄の公安委員会にご確認ください。
- 計画と実績のかい離:計画書どおりに実施できなかった場合、その都度教育実施簿に実態を記録し、計画と実績が大きくずれないよう四半期ごとに進捗を確認するのが安全です。
教育記録や不足時間の管理をクラウドで行いたい場合、ケイビログでは警備員ごとの累積教育時間と年度の不足を自動で可視化でき、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)で試せます。
詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。制度の解釈や個別の運用は営業所の状況によって異なります。
まとめ
- 現任教育は毎年度(4月1日〜翌年3月31日)、一般の警備員で基本教育+業務別教育を合わせて10時間以上が必要(施行規則38条5項の表1項)
- 検定・指導教育責任者資格の保有状況によって業務別6時間への軽減や免除がある
- 10時間を年度末に一括で消化せず、四半期ごとに2〜3時間程度へ配分すると未達リスクを抑えられる
- 年間計画は教育計画書として書面化し、年度開始30日前までに営業所へ備え付ける(66条3項)
- 計画と実績のかい離は教育実施簿で管理し、四半期ごとに進捗を確認する
まずは自社の警備員を区分ごとに仕分け、教育時間チェッカーで必要時間を確認するところから始めてみてください。
よくある質問
Q. 現任教育の年間計画は、いつから作り始めればよいですか?
新年度の教育計画書は年度開始日の30日前までに備え付ける必要があるため(施行規則66条3項)、4月開始の年度なら遅くとも2月中には作成に着手するのが安全です。前年度の実施状況を踏まえて時間配分を見直す時間も確保できます。
Q. 現任教育の10時間は、月ごとに均等に割らないといけませんか?
均等割りの義務はありません。年度内に基本教育・業務別教育を合わせて10時間以上実施し、記録が残っていれば要件を満たします。ただし年度末への偏りは未達リスクを高めるため、四半期ごとの配分が実務上は安全です。
Q. 検定を持っている警備員と持っていない警備員で、別々の計画書を作る必要がありますか?
同じ教育計画書の中で、区分ごとに時間数を分けて記載する形で問題ありません。対象となる警備員の範囲を区分ごとに明記すれば、1枚の計画書内に一般・6時間・免除の区分を併記できます。
Q. 年度の途中で新しく警備員を採用した場合、現任教育の年間計画はどうなりますか?
新たに採用した警備員には、まず新任教育(原則20時間以上)を行います。新任教育を実施した年度は、その警備員について現任教育を重ねて行う必要はありませんが、翌年度からは他の在籍者と同じ現任教育の年間計画に組み込みます。