実地教育とは — 代替できるのは「業務別教育」だけ
実地教育とは、教室での講義・実技ではなく、**実際の警備業務の現場に就かせて行う指導(OJT)**のことです。警備業法施行規則38条3項の備考により、新任教育の「業務別教育」の一部を、この実地教育で代替できます。
ここで押さえるべき前提は2つです。
- 代替できるのは業務別教育だけ。基本教育(警備業務一般の知識など)は実地教育で代替できません。
- 代替には上限がある。区分ごとに「○時間まで」「業務別教育時間数の2分の1まで」といった上限が決まっており、無制限に現場任せにはできません。
新任教育20時間の負担を現実的に運用するための仕組みですが、上限の計算を誤ると教育時間の不足=教育義務違反になりかねません。区分ごとの上限と計算方法を整理します。
区分別の代替上限(早見表)
新任教育の区分(施行規則38条4項の表)ごとに、実地教育で代替できる業務別教育の上限は次のとおりです(規則38条3項備考各号)。
| 新任教育の区分 | 法定時間 | 実地教育で代替できる業務別教育の上限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 一般の新任(基本+業務別) | 20時間 | 業務別教育時間数の2分の1、または5時間の少ない方 | 備考1号 |
| 別区分の経験者・元警察官(基本+業務別) | 13時間 | 業務別教育時間数の2分の1、または5時間の少ない方 | 備考1号 |
| 同区分の経験者(基本+業務別) | 7時間 | 業務別教育時間数の2分の1、または2時間の少ない方 | 備考4号 |
| 他種別・他区分の資格保有(業務別のみ) | 10時間 | 5時間 | 備考2号 |
| 他種別資格+同区分経験(業務別のみ) | 3時間 | 2時間 | 備考3号 |
| 機械警備+管理者資格(基本のみ) | 10時間/3時間 | 代替なし(業務別教育がないため) | — |
自社の警備員がどの区分に当たるかは、資格・経歴を選ぶだけで判定できる教育時間チェッカーで確認できます。
計算方法 — 「2分の1」と「上限時間」の少ない方
備考1号・4号のように「2分の1または○時間の少ない方」となっている区分では、次の手順で求めます。
- 教育計画上の業務別教育の時間数を確認する(基本教育の時間は使いません)
- その2分の1を計算する。30分以上1時間未満は1時間に切り上げ、30分未満は切り捨て(備考1号)
- 区分の**上限時間(5時間または2時間)**と比べ、少ない方が実地教育で代替できる上限
備考2号・3号(業務別教育のみの区分)は「2分の1」の計算がなく、それぞれ5時間・2時間が上限です。
計算例
例1:一般の新任(20時間/業務別教育を12時間と計画)
- 業務別12時間 × 1/2 = 6時間
- 上限5時間(備考1号)と比べ、少ない方は 5時間
- → 業務別教育12時間のうち5時間までを実地教育で代替でき、残り7時間は講義・実技で実施
例2:同区分の経験者(7時間/業務別教育を4時間と計画)
- 業務別4時間 × 1/2 = 2時間
- 上限2時間(備考4号)と比べ、少ない方は 2時間
- → 業務別教育4時間のうち2時間までを実地教育で代替できる
例3:他種別の資格保有者(業務別のみ10時間)
- 備考2号により上限は 5時間(2分の1の計算はなし)
- → 業務別教育10時間のうち5時間までを実地教育で代替できる
実地教育で代替した分も「教育を実施した」記録は必要です。教育計画書に実地教育で行う時間を織り込み、教育実施簿に実施方法を「実地教育」と記録します。年度と区分から記載事項を満たした計画書ひな形を作れる教育計画書テンプレートも使えます。
「業務別教育時間数」をいくらで計画するか、端数の取扱いの細部は運用に幅があります。個別には管轄の公安委員会・警察署にご確認ください。
よくある質問
Q. 基本教育も実地教育で代替できますか?
できません。実地教育で代替できるのは業務別教育の一部だけです(規則38条3項備考)。基本教育は講義等で実施する必要があります。
Q. 「2分の1または5時間の少ない方」とはどう計算しますか?
教育計画上の業務別教育の時間数を2分の1にし(30分以上1時間未満は切上げ、30分未満は切捨て)、その値と5時間を比べて少ない方が上限です。たとえば業務別12時間なら、12×1/2=6時間と5時間を比べ、5時間までが代替の上限になります。
Q. 現任教育でも実地教育で代替できますか?
実地教育による業務別教育の代替を定めているのは新任教育(規則38条3項・4項)です。現任教育の取扱いは別途、管轄の公安委員会・警察署にご確認ください。
Q. 実地教育で代替した分は記録しなくてよいですか?
記録は必要です。教育計画書に実地教育で行う時間を織り込み、教育実施簿に実施方法を「実地教育」として記録します。代替は実施義務を免除するものではありません。