「資料・教材は何を使えばいいのか」——2号警備の現場でよくある悩み
現任教育(すでに警備業務に就いている警備員に毎年度行う教育)の担当になったものの、「何を資料にして教えればいいのか」で手が止まっていないでしょうか。特に交通誘導・雑踏警備(2号警備)は現場作業が中心で、座学用のテキストが手元にない会社も少なくありません。時間数のルールは調べればわかっても、「教材をどう用意し、実施簿にどう書き残せば立入検査に通るか」までは情報が少ないのが実情です。この記事では、2号警備の現任教育を例に、教育事項に対応したテーマ例と教材の探し方、教育実施簿への記録の仕方を整理します。
結論:法律が求めるのは「教育事項」の実施、教材の形式は会社の裁量
結論から言うと、警備業法施行規則は教える事項(テーマ)と時間数を定めていますが、使う教材の形式(市販テキストか自作資料か)までは指定していません。根拠は警備業法21条2項と、その委任を受けた警備業法施行規則38条です。
つまり「教材を持っていない」ことそのものが違反になるわけではなく、教育事項に対応した内容を、必要時間数きちんと実施し、記録を残すことが義務の本体です。逆に言えば、市販の立派なテキストがなくても、道路交通法令の抜粋や自社のヒヤリハット事例、資機材の取扱説明書を組み合わせれば、法定の教育事項を満たす教材は作れます。どのテーマに何の資料を当てるかを決めることが、現任教育の資料準備の実質です。
2号警備の現任教育:テーマ例と教材の当て方
施行規則38条5項の表により、現任教育は一般の警備員で毎年度(4月1日〜翌3月31日)、基本教育+業務別教育を合計10時間以上実施する必要があります(検定保有者等は時間数が変わる区分もあり、詳しくは教育時間チェッカーで確認できます)。
基本教育(全区分共通)の現任教育事項は3つ、2号警備の業務別教育事項は6つです(同条2項・3項の表)。それぞれにテーマ例と教材の当て方を整理すると、次のようになります。
基本教育(現任・3事項)
| 教育事項 | テーマ例 | 教材の当て方 |
|---|---|---|
| 警備業務実施の基本原則 | 誠実・公正な業務遂行、守秘義務 | 自社の就業規則・警備業法の解説リーフレット |
| 警備業法その他の関係法令 | 直近の法改正、行政処分事例 | e-Gov法令検索の条文、警察庁・都道府県警察の通達 |
| 事故発生時の警察機関への連絡・応急措置 | 現場での110番要領、応急手当 | 救急法のテキスト、自社の事故報告事例(実技訓練も必要) |
業務別教育(2号警備・現任6事項)
| 教育事項 | テーマ例 | 教材の当て方 |
|---|---|---|
| 道路交通関係法令 | 通行区分、合図の方法の改正点 | 道路交通法の抜粋、都道府県警察の交通誘導講習資料 |
| 車両・歩行者の誘導方法 | 誘導棒・合図の統一ルール | 現場写真を使った手順書、資機材メーカーの取扱説明書 |
| 雑踏の整理方法 | イベント時の滞留対策 | 過去の雑踏事故の報道・報告書、自社の配置図 |
| 各種資機材の使用方法 | 保安灯・看板・セーフティコーンの設置基準 | 資機材の取扱説明書、現場チェックリスト |
| 負傷等の事故発生時の措置 | 事故発生時の初動・報告ルート | 自社のヒヤリハット事例、応急手当の資料 |
| その他必要な知識・技能(包括事項) | 自社現場特有の手順 | 現場別の作業要領書 |
包括事項(「その他…必要な知識及び技能」)は会社ごとに中身を決める部分なので、自社の現場写真や作業要領書をそのまま教材にできます。既製のテキストがなくても、現場の実例を言語化すれば教育事項を満たす資料になります。資料が決まったら、教育計画書テンプレートで区分を選び、テーマと時間数を落とし込んでおくと準備がスムーズです。
自社で確認・対応する手順
- 業務区分の確認——2号警備(交通誘導・雑踏警備)に該当する業務か、警備業法2条1項2号の定義で確認する。
- 教育事項とテーマの対応づけ——上表の6つの業務別教育事項+3つの基本教育事項それぞれに、具体的なテーマを割り当てる。
- 教材の手配——市販テキストがなければ、法令の条文抜粋・自社の事故事例・資機材の説明書を教材として整理する。全国警備業協会は「教育教材」「eラーニング」の提供を行っており(全国警備業協会)、自作が難しいテーマはこうした外部教材で補う選択肢もあります。
- 教育計画書への反映——テーマ・時間数・実施方法(講義か実技か)を教育計画書に記載し、年度開始30日前までに営業所に備え付ける(施行規則66条3項)。
- 実施簿への記録——実施後は教育実施簿の「内容」欄に、教育事項名だけでなく使った教材名・テーマまで具体的に書く。「業務別教育」だけでなく「業務別教育(誘導棒の合図統一/現場チェックリストを使用)」のように書けば、立入検査で何を教えたかをその場で説明できます。
現任教育10時間を基本教育4時間・業務別教育6時間に配分する場合、業務別の6時間を6つの教育事項に均等に割れば 6 ÷ 6 = 1時間ずつがテーマごとの目安になります。在籍する2号警備員が8名であれば、年度内に実施すべき記録は 10時間 × 8名 = 延べ80時間分です。実施簿の記載が、この延べ時間に積み上がっているかを年度末前に確認してください。
注意点・誤解しやすいポイント
「市販テキストを買わないと違反」という誤解——教材の形式そのものを法律が指定しているわけではありません。教育事項に対応した内容を実施し、記録することが義務です。ただし「その他必要な知識及び技能」のように抽象的な事項を、内容のない雑談で済ませると、立入検査で「教育事項に該当しない」と指摘される可能性があります。
「資料があれば記録は簡単でいい」という誤解——教材をどれだけ充実させても、教育実施簿の記載事項(年月日・内容・方法・時間数・場所・実施者・対象者)と確認欄が欠けていれば、実施の証明にはなりません(規則66条1項6号)。
保存期間の取り違え——教育実施簿・教育計画書は、当該年度が終了した日から2年間の備付けが必要です(規則66条2項)。前年度分をすぐに廃棄してしまう運用は要注意です。
教材の当て方やテーマの切り分けに迷う場合は、自社の状況を確認したい方は教育計画書テンプレートで区分・年度を選ぶと、教育事項があらかじめ並んだ状態で作成できます。教育記録をクラウドで一元管理したい場合は、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)もお試しいただけます。
まとめ
- 現任教育は毎年度10時間以上(基本教育+業務別教育)。教材の形式は法律で指定されておらず、教育事項に対応した内容を実施・記録することが本体の義務(規則38条5項)
- 2号警備の業務別教育事項は6つ。市販テキストがなくても、法令抜粋・自社の事故事例・資機材の説明書で教材を組める
- 教育計画書は年度開始30日前までに備え付け、実施後は教育実施簿の「内容」欄に教材名・テーマまで具体的に書く
- 教育実施簿・教育計画書は年度終了後2年間の保存が必要(規則66条2項)
- 2026年時点の規定に基づく解説。最新の条文はe-Gov法令検索で確認を
よくある質問
Q. 2号警備の現任教育に、市販の教材は必須ですか?
必須ではありません。施行規則38条が定めるのは教育事項と時間数で、教材の形式までは指定されていません。法令の条文抜粋や自社の事故事例、資機材の取扱説明書を組み合わせても、教育事項に対応していれば教材として使えます。
Q. 教育実施簿の「内容」欄には何を書けばよいですか?
教育事項の名称だけでなく、実際に使ったテーマ・教材を具体的に書くことをおすすめします。「業務別教育」とだけ書くより、「業務別教育(誘導棒の合図統一/現場チェックリストを使用)」のように書けば、立入検査で教育の実態を説明しやすくなります。記載事項そのものは規則66条1項6号で定められており、年月日・内容・方法・時間数・場所・実施者・対象者と確認欄が必要です。
Q. 「その他当該警備業務を適正に実施するため必要な知識及び技能」は何を教えればよいですか?
施行規則38条3項の表の包括事項で、会社ごとに内容を決める部分です。自社の現場特有の手順・ヒヤリハット事例などを教材にできますが、抽象的な事項のまま記録すると立入検査で内容を問われるため、教育計画書に具体的なテーマを明記しておくことが望ましいです。
Q. 全国警備業協会の教材は使えますか?
全国警備業協会は教育教材やeラーニングの提供を行っています。自社でテーマごとの教材を作るのが難しい場合、外部の教材を補助的に使う選択肢もあります。ただし、採用する教材が自社の業務区分・教育事項に対応しているかは自社で確認する必要があります。
Q. テーマや教材の選び方に迷ったら誰に相談すればよいですか?
詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。立入検査での指摘事例や、地域特有の運用がある場合もあるため、管轄警察署への事前相談も有効です。