現任教育の時間が足りない――年度末が近づいて気づいたときに読む記事
教育計画は立てたはずなのに、年明けに教育実施簿を見返したら「このままでは今年度の現任教育の時間が足りない」と気づいた。交代勤務や欠員でシフトを回すのに精一杯で、教育の時間を確保しきれなかった――警備会社の管理者や指導教育責任者からよく聞く相談です。この記事では、未達に気づいた時点で何を確認し、年度末までにどう挽回すればよいかを具体的な数字とともに整理します。
結論:不足分は年度末(3月31日)までに実施すれば間に合う
結論から言うと、現任教育の未達は「気づいた時点」でアウトが確定するものではありません。警備業法施行規則第38条第5項の表1項により、一般の警備員は基本教育と業務別教育を合わせて毎年度(4月1日〜翌年3月31日)10時間以上が必要ですが、この期間内であれば、いつ実施しても要件は満たせます。2026年時点の規定では、月ごとの実施義務や均等割りのルールはなく、年度内合計が基準に達していれば問題ありません。
最大のリスクは「不足に気づいたのに、年度末まで何もしないまま3月31日を迎えること」です。逆に言えば、今から不足時間を洗い出し、残りの期間で実施計画を組み直せば、教育義務違反は回避できます。
現任教育の時間数と、不足が生まれやすい区分
まず前提を整理します。施行規則38条5項の表では、資格・従事状況によって現任教育の時間数が次のように分かれます。
| 区分 | 現任教育の時間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般の警備員 | 毎年度10時間以上(基本+業務別) | 38条5項の表1項 |
| 検定合格者を、その種別以外の業務に従事させる場合等 | 業務別教育6時間 | 38条5項の表2項 |
| 2級検定合格者を、その種別の業務に従事させる場合 | 業務別教育6時間 | 38条5項の表2項 |
| 1級検定合格者を、その種別の業務に従事させる場合 | 免除 | 38条5項柱書 |
| 指導教育責任者資格者証の区分と同じ業務に従事させる場合 | 免除 | 38条5項柱書 |
不足が生まれやすいのは、この「一般の警備員(10時間)」区分の人数が多い営業所です。免除・軽減の条件は現任教育が免除・軽減される警備員の条件で詳しく整理していますが、自社の隊員がどの区分かをまず確定させないと、そもそも「何時間足りないか」が計算できません。なお現任教育は令和元年(2019年)の改正で「教育期(半年)ごと」から「年度ごと」の制度に一本化されており、この経緯は警視庁の案内でも確認できます。古い資料の時間数を参照すると不足の計算を誤るため、必ず現行の年度ベースで確認してください。資格・経歴を入力するだけで区分と必要時間を判定できる教育時間チェッカーで、対象者を仕分けるところから始めると確実です。
不足時間の計算例
区分が確定したら、不足時間は「必要時間 − 実施済み時間」の隊員ごとの合計で求めます。
たとえば3号警備(貴重品運搬)に従事する一般の警備員が4名在籍しており、年明けに教育実施簿を確認したところ、各人の実施済み時間が6時間・4時間・8時間・10時間だったとします。1人あたりの必要時間は10時間なので、不足時間は次のとおりです。
- Aさん:10−6=4時間
- Bさん:10−4=6時間
- Cさん:10−8=2時間
- Dさん:10−10=0時間(達成済み)
合計すると 4+6+2+0=12時間の教育機会を、残りの期間で確保する必要があります。1回の集合教育を3時間で実施できるなら、12時間 ÷ 3時間=4回のセッションが目安です。人数分をまとめて実施すれば、必ずしも4回すべてを別日に分ける必要はありません。
今すぐやること:不足の洗い出しから実施までの手順
- 教育実施簿を隊員ごとに集計する。実施済み時間の合計が10時間(または該当区分の時間)に達しているかを個人単位で確認します。年度合計で見落としがちなのは、基本教育・業務別教育のどちらかに極端に偏っていないかという点です。38条5項の表は「基本教育と業務別教育を合わせて」10時間としているため、片方がゼロのままでは不足解消にはなりません。
- 不足人数分の実施計画を組み直す。年度末までの残り日数と、シフト上で全員を集められる日を洗い出し、教育計画書に追記・修正します。
- 実施は必ず年度末(3月31日)までに終える。年度をまたいで実施した時間は、その回に実施した年度分としてしか計上できません。「来年度分で埋め合わせる」という発想は成立しない点に注意が必要です。
- 実施の都度、教育実施簿に記録する。実施年月日・内容・方法・時間数・実施場所・実施者・対象警備員の氏名を記載し、指導教育責任者と実施者が内容に誤りがないことを確認・付記します(教育実施簿の記載事項)。
隊員ごとの累積時間と不足を都度手集計するのは負担が大きい作業です。教育記録をクラウドで管理すれば、隊員ごとの累積時間と年度の不足を自動で可視化できます。14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)で、今年度の不足状況をそのまま入力して確認することもできます。
注意点・誤解しやすいポイント
- 記録の遡り・水増しは絶対に避ける:不足に焦って「実施していない教育を実施済みとして実施簿に記載する」ことは、教育実施簿の虚偽記載であり、実際に教育を怠った以上に重い問題になり得ます。足りない時間は、あくまで実際に教育を行って埋めるほかありません。
- 実地教育(OJT)による代替は新任教育の話:新任教育では業務別教育の一部を実地教育で代替できますが(規則38条3項備考)、この代替規定が現任教育の不足時間にそのまま使えるかは条文上明確ではありません。実地教育による代替の記事でも触れているとおり、現任教育での取扱いは管轄の公安委員会に確認してから判断してください。
- 「気づいた時点」で終わりではない:教育義務違反は、公安委員会の立入検査で発覚すると指示処分や営業停止命令の対象になり得ます。裏を返せば、検査の前に自主的に不足を解消しておけば、それ自体が是正の実績になります。
- 来年度の計画にも反映する:今年度に不足が出た原因(シフト調整の遅れ、教育計画の作成が遅かった等)を洗い出し、来年度の教育計画書の作成・実施時期を前倒しすることが、同じ問題の再発防止になります。
自社の状況を確認したい方は、資格・経歴を選ぶだけで必要時間と不足の考え方を確認できる教育時間チェッカーを、不足解消の計画づくりの出発点として使ってみてください。
詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。個別の営業所の状況によって、実施可能な期間や検査の運用には幅があります。
まとめ
- 現任教育の不足は、年度末(3月31日)までに実施できれば挽回可能。放置して期限を過ぎることが最大のリスク
- 不足時間は「必要時間(10時間等)−隊員ごとの実施済み時間」の合計で計算する
- 実施は必ず今年度内に行い、教育実施簿に実施年月日・内容・時間数・確認欄を記録する
- 実施していない教育を実施済みと記載する虚偽記載は絶対に避ける
- 来年度は教育計画書の作成・実施時期を前倒しし、同じ不足を繰り返さない
よくある質問
Q. 現任教育の不足に、3月に入ってから気づきました。もう間に合いませんか?
3月31日までに残りの時間数を実施し、教育実施簿に記録できれば、その年度の要件は満たせます。日数に余裕がない場合ほど、対象人数と1人あたりの不足時間を早く確定させ、実施日を確保することが重要です。
Q. 不足分をまとめて1日で実施してもよいですか?
条文上、1回あたりの実施時間の上限は定められていません。ただし基本教育・業務別教育の両方を含める必要があり(38条5項の表1項)、長時間の詰め込みで実質的な教育効果が乏しいと判断されると、立入検査で指摘を受ける可能性があります。
Q. 今年度中に実施しきれなかった時間を、来年度分に繰り越せますか?
繰り越しは想定されていません。現任教育は年度(4月1日〜翌年3月31日)ごとに完結する義務のため、今年度の不足は今年度中に解消する必要があります。来年度分は、来年度の必要時間として別途実施します。
Q. 教育実施簿がそもそも整っていない場合はどうすればよいですか?
記載事項(実施年月日・内容・方法・時間数・場所・実施者・対象警備員の氏名、確認欄)が抜けている場合は、教育実施簿の記載要件を確認し、今後の実施分から様式を整えます。過去分を後から正確に復元できない場合は、その旨を含めて管轄の公安委員会に相談することをおすすめします。