教育計画書は「提出」不要、営業所への備付けで足りる
「教育計画書は公安委員会に提出しないといけないのでは」——警備業の許可を取ったばかりの管理者や、他社から異動してきた指導教育責任者(警備員に対する教育を管理する立場の資格者)から、この質問をよく受けます。届出書類が多い業界だけに、教育計画書も同じ扱いだと思い込みやすいのは無理もありません。
結論から言うと、教育計画書を公安委員会へ提出する義務はありません。作成した教育計画書は自社の営業所に備え置き、公安委員会(警察職員)による立入検査のときに提示できる状態にしておけばよい書類です。この扱いの根拠と、混同しやすい「提出が必要な書類」との違いを整理します。
なぜ「提出」と混同しやすいのか——根拠条文で見る違い
警備業法45条は「警備業者は、内閣府令で定めるところにより、営業所ごとに、警備員の名簿その他の内閣府令で定める書類を備えて、必要な事項を記載しなければならない」と定めています。この「内閣府令で定める書類」の具体的な中身が警備業法施行規則66条1項で、1号から8号まで8種類列挙されており、教育計画書は5号、教育実施簿は6号にあたります。つまり教育計画書の根拠は「備付け」を定めた45条であって、「届出」を定めた条文ではありません。
紛らわしいのは、この66条1項の同じリストの中に、実際に公安委員会へ提出した書類の写しも並んでいる点です。1号の認定証の写し、2号の警備業法9条(営業所の届出等)の届出書の写し、3号の同法11条(変更の届出)の届出書の写しがそれにあたります。9条・11条は「当該都道府県の区域を管轄する公安委員会に…届出書を提出しなければならない」と明記された、正真正銘の提出義務です。一方、教育計画書・教育実施簿にはこうした提出の定めがなく、最初から営業所に備え置くだけで足ります。同じ棚に並ぶ書類でも、由来が違う2種類が混ざっているのが誤解のもとです。
| 書類 | 公安委員会への提出 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 認定申請書・営業所の届出書・変更届出書 | 必要(提出後、写しを備付け) | 警備業法5条・9条・11条 |
| 教育計画書 | 不要(最初から備付けのみ) | 警備業法45条/施行規則66条1項5号 |
| 教育実施簿 | 不要(最初から備付けのみ) | 警備業法45条/施行規則66条1項6号 |
備え付けた書類は「出さなくてよい」のではなく、いつ確認されてもよい状態が求められています。警備業法47条は「公安委員会は、この法律の施行に必要な限度において、警察職員に警備業者の営業所、基地局又は待機所に立ち入り、業務の状況又は帳簿、書類その他の物件を検査させることができる」と定めており、教育計画書・教育実施簿はこの立入検査で真っ先に確認される書類の1つです。提出こそしませんが、義務の重さが軽いわけではありません。
自社の教育計画書がこの備付け義務を満たす内容になっているか不安な場合は、教育計画書テンプレートで年度・区分を選ぶだけで必須項目を満たした様式を確認できます。
教育計画書に書く内容と、時間数の考え方
施行規則66条1項5号は、教育計画書に「実施時期」「内容」「方法」「時間数」「実施者の氏名」「対象となる警備員の範囲」を記載するよう求めています。この時間数の元になるのが施行規則38条の教育時間規定で、区分によって次のように変わります。
| 区分 | 教育の種類 | 時間数 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 新任・一般警備員 | 基本教育+業務別教育 | 20時間以上 | 施行規則38条4項 |
| 新任・別種別からの転換等 | 業務別教育のみ | 10時間以上 | 施行規則38条4項 |
| 新任・同区分の実務経験者 | 業務別教育のみ | 3時間以上 | 施行規則38条4項 |
| 現任・一般警備員(毎年度) | 基本教育+業務別教育 | 10時間以上 | 施行規則38条5項 |
| 現任・別種別からの従事者(毎年度) | 業務別教育のみ | 6時間以上 | 施行規則38条5項 |
区分ごとの免除・軽減の細かい判定は現任教育の免除・軽減の記事に譲りますが、計画書を組む段階でよく使うのが「実地教育(現場でのOJT)による代替」です。業務別教育の一部は実地教育に置き換えられますが、上限は業務別教育時間数の2分の1までと定められています(施行規則38条3項備考)。たとえば業務別教育を6時間と計画した場合、実地教育で代替できるのは 6 ÷ 2 = 3時間までで、残り3時間は講義・実技で実施しなければなりません。この時間配分をそのまま計画書の「方法」欄・「時間数」欄に落とし込みます。
自社で確認・対応する手順
- 現行の教育計画書に、施行規則66条1項5号の6項目(実施時期・内容・方法・時間数・実施者氏名・対象範囲)が漏れなく記載されているか照合する
- 翌年度分の教育計画書が、教育期(年度)開始日の30日前までに作成・備付けできる見込みか確認する(施行規則66条3項)。4月1日開始の年度なら3月2日ごろが目安です
- 在籍する警備員それぞれの区分(新任・現任、資格による免除・軽減の有無)を洗い出し、必要時間数を計画に反映する
- 計画書と、実際の記録を残す教育実施簿が同じ営業所ですぐ提示できる状態か確認する(保存期間は教育期終了後2年間、施行規則66条2項)
- 紙で運用しづらければ、施行規則67条の要件を満たす電磁的記録(クラウド管理)への切り替えも検討する
この手順のうち3〜4を毎年繰り返す負担が大きい場合は、教育計画書テンプレートで計画のたたき台を作り、日々の記録は14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)でクラウド管理に一本化する方法もあります。
注意点・誤解しやすいポイント
- 「提出しなくてよい」=「作らなくてよい」ではない:立入検査で未整備が発覚すれば、その場で指摘・是正指導の対象になります。提出義務がないことと、作成・備付け義務がないことは別問題です。
- 他の届出書類と保存期間の起算点が違う:教育計画書・教育実施簿の保存2年間は「教育期が終了した日」からの起算です(66条2項)。届出書の写しなど他の備付け書類は起算点や保存期間の考え方が異なる場合があるため、書類ごとに確認が必要です。
- 主たる営業所以外にも備付けが必要:複数の営業所を持つ場合、教育計画書は本社だけでなく教育を実施する各営業所ごとに備え置く書類です。本社に1部あれば足りるわけではありません。
- 年度途中の資格取得・退職を計画書に反映し忘れやすい:計画作成後に検定合格や異動があると、対象範囲や必要時間数が変わることがあります。計画と実態がずれたまま放置すると、立入検査での指摘につながります。
このあたりの運用は営業所の実態や過去の指摘事項によって幅があります。詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。
まとめ
- 教育計画書は警備業法45条・施行規則66条1項5号に基づく「備付け書類」で、公安委員会への提出義務はない
- 提出が必要なのは認定申請書・営業所の届出書・変更届出書など(警備業法5条・9条・11条)で、教育計画書とは根拠条文が異なる
- 提出しない代わりに、警備業法47条の立入検査でいつでも確認できる状態にしておく必要がある
- 教育計画書は教育期開始の30日前までに備付け、教育期終了後2年間の保存が必要(施行規則66条2項・3項)
- 記載事項の過不足が不安なら教育計画書テンプレートで様式を確認し、記録の管理をクラウドで効率化したい場合は無料トライアルの活用も検討するとよいでしょう
よくある質問
Q. 教育計画書を作成したら、公安委員会に提出しないといけませんか?
提出する必要はありません。教育計画書は警備業法45条・施行規則66条1項5号に基づき、営業所に備え置く書類です。提出義務があるのは認定申請書や営業所の届出書など別の書類です(警備業法5条・9条・11条)。
Q. 提出しなくてよいなら、公安委員会はいつ教育計画書を確認するのですか?
警備業法47条に基づく立入検査のときに、警察職員が営業所で直接確認します。提出義務がない代わりに、いつ検査が入っても提示できる状態で備え置いておく必要があります。
Q. 教育計画書と、営業所の届出書はどちらも同じ「備付け書類」と聞きましたが、扱いは同じですか?
同じ施行規則66条1項の備付け書類リストに含まれますが、性格は異なります。届出書は公安委員会へ提出した後にその写しを備え付ける書類(1〜3号)で、教育計画書・教育実施簿は最初から提出せず備え置くだけの書類(5号・6号)です。
Q. 教育計画書を提出していなかったことに気づいた場合、今から提出すればよいですか?
提出そのものが不要な書類なので、提出先はありません。必要なのは、備付け義務(施行規則66条3項の30日前までの備付けなど)を満たせていなかった点の是正です。現状の教育実施状況を踏まえて速やかに計画書を作成・備付けし、今後の運用を見直してください。判断に迷う場合は管轄の公安委員会に確認するのが安全です。