「教育を行った者」欄は誰の名前を書く?結論から言うと書き方は3パターン
「外部の研修会社に警備員教育を頼んだけれど、教育実施簿の『教育を行った者』欄には誰の名前を書けばいいのか分からない」——指導教育責任者や採用担当者になったばかりの方から、こうした相談をよく受けます。自社の指導教育責任者(指教責)が行った教育なら迷いませんが、外部講師や委託先が関わると、記載者が誰になるのか、そもそもその教育を法定時間数に含めてよいのかが分かりにくくなります。
結論から言うと、実施者の氏名欄には実際にその教育を行った人の氏名(外部講師であれば所属先と氏名)を書きます。ただし、外部の講師・機関が行った教育(部外実施教育)を教育時間数に算入できるかどうかには条件があり、条件を満たさない教育は実施簿に書いても法定時間数として認められません。この記事では、警備業法施行規則と警察庁の解釈運用基準(通達)を根拠に、外部講師のケースを中心に記載方法を具体的に解説します。
実施者になれるのは誰か:施行規則38条が定める要件
施行規則38条1項の規定により、基本教育・業務別教育(講義・実技訓練の方法によるもの)を行えるのは、指導教育責任者、または「これと同等の知識経験がある者として国家公安委員会が定める者」に限られます。現場でマンツーマン方式により行う実地教育に限っては、2年以上継続して当該警備業務に従事している警備員も担当できます。この要件を満たさない人が行った教育は、施行規則上の「警備員教育」として認められません。実施者の資格要件そのものの詳しい整理は教育を行う者の要件の記事で扱っているため、ここでは外部講師のケースに絞って掘り下げます。
外部講師・外部委託の教育を実施簿に書けるケース(部外実施教育)
警備業者は自社の責任で警備員教育を行う義務がありますが、その全部を自社の従業員だけで行う必要はありません。警察庁の「警備業法等の解釈運用基準について(通達)」(令和元年8月30日付け警察庁丙生企発第23号)では、警備業者またはその従業者以外の者が行う教育を「部外実施教育」と呼び、一定の条件を満たせば教育時間数への算入を認めるとしています。
条件は、教育を実施する場所によって次のように分かれます。
| 実施の場所 | 教育を行える者 | 算入の条件 |
|---|---|---|
| 自社が使用・管理する施設内 | 高度な専門知識・技能を有する部外の講師(招へい講師) | 教育事項が施行規則38条に適合し、指導教育責任者が作成した教育計画書の計画に基づき実施すること |
| 自社施設外(委託先の施設等) | ①全国警備業協会等の教育訓練事業を行う一般社団・一般財団法人、②事業協同組合(組合員向け教育)、③法23条3項の登録講習機関、④複数の警備業者が共同実施を約した団体 | 上記①〜④のいずれかに該当し、かつ左と同じ条件を満たすこと |
一方で、実地教育(現場でのマンツーマン教育)は、その方法の特性上、警備業者またはその従業者以外の者が行うことは適当でないとされ、部外実施教育としての時間数算入から除外されています。つまり「外部講師に教わった」という実績を実施簿に書けるのは、あくまで講義・実技訓練の方法で行われた基本教育・業務別教育に限られ、現場同行型の実地教育を外部の人に任せて算入することはできません。
判定に迷う場合は、教育時間チェッカーで自社の警備員の区分・資格・経験を入力すると、必要な教育の種類と時間数を確認できます。外部委託分がどの区分に当てはまるかを先に整理してから、実施簿の記載に進むと迷いません。
実施簿への具体的な書き方:内部実施と外部講師の違い
施行規則66条1項6号は、教育実施簿に実施年月日・内容・方法・時間数・実施場所・実施者の氏名・対象警備員の氏名を記載し、指導教育責任者および実施者が誤りのないことを確認する旨を付記するよう定めています。前述の通達に添付された記載例では、実施者の氏名欄に「警備員指導教育責任者 ○○○○」のように役職名を添えて記入する形式が示されています。外部講師の場合もこれに倣い、所属先の名称+担当講師の氏名を書くのが実務上分かりやすい方法です。
| 実施者の区分 | 実施場所 | 算入できる教育の方法 | 実施者の氏名欄の記載例 |
|---|---|---|---|
| 自社の指導教育責任者 | 自社 | 基本教育・業務別教育・実地教育すべて | 警備員指導教育責任者 山田太郎 |
| 2年以上継続従事の警備員 | 現場 | 実地教育のみ | 現場責任者 佐藤次郎 |
| 招へいした部外講師 | 自社施設内 | 基本教育・業務別教育(講義・実技訓練) | ○○株式会社 講師 鈴木一郎 |
| 全国警備業協会等の教育訓練団体 | 委託先施設 | 基本教育・業務別教育(講義・実技訓練) | 全国警備業協会○○支部 講師 田中花子 |
| 登録講習機関 | 委託先施設 | 基本教育・業務別教育(講義・実技訓練) | ○○登録講習機関 講師 高橋健 |
具体的な計算で見てみます。新任教育の原則区分(基本教育+業務別教育で合計20時間以上、規則38条4項の表1項)に当たる警備員について、教育計画上の業務別教育を14時間と配分したとします。このうち10時間を登録講習機関に委託して自社施設内で受講させ、残り4時間は自社の指導教育責任者が実技訓練で行えば、10時間+4時間=14時間で計画どおりの時間数を満たせます。仮にこの14時間を実地教育だけで代替しようとした場合、上限は業務別教育時間の2分の1(14 ÷ 2 = 7時間)と規則38条3項備考1号の上限時間数(5時間)のいずれか少ない方、つまり最大5時間までしか認められません。部外実施教育にはこの2分の1上限が適用されないため、外部委託分をそのまま実施簿に積み上げられる点が、実地教育との大きな違いです。
自社の実施簿の様式にこの区分がきちんと反映できているか不安な場合は、教育実施簿テンプレート(無料)を使うと、実施者・時間数・確認欄が揃った様式をすぐに用意できます。
自社で確認・対応する手順
まず、外部に依頼している教育(招へい講師・研修会社・全国警備業協会の講習など)を洗い出し、それぞれが自社施設内での実施か施設外への委託かを整理します。次に、施設外委託であれば委託先が前述の4分類(教育訓練団体・事業協同組合・登録講習機関・共同実施団体)のいずれかに該当するかを確認します。該当が確認できたら、指導教育責任者が作成する教育計画書に、その教育を計画の一部として明記します。教育の実施後は、実施簿の実施者の氏名欄に講師の所属先と氏名を記入し、指導教育責任者が確認欄に記名・押印します。最後に、警備員名簿の教育欄にも同じ実施年月日・内容・時間数・実施者氏名を転記し、実施簿との記載が食い違わないようにします。
記載時に誤解しやすいポイント
「外部に頼んだから確認欄は不要」は誤り。66条1項6号は指導教育責任者「および実施者」の確認を求めているため、外部講師が担当した回であっても、自社の指導教育責任者が確認欄に記名する必要があります。実施者本人の確認をどう得るかは、委託先に確認書への署名を依頼する、実施報告書を受け取って指教責が内容を照合するなど、委託先と事前に取り決めておくとスムーズです。
「実地教育も外部に丸投げできる」は誤り。実地教育は現場でのマンツーマン教育という方法の特性上、部外実施教育として時間数に算入することが認められていません。外部委託できるのはあくまで講義・実技訓練の方法による基本教育・業務別教育です。
「施設外の講習ならどこに頼んでもよい」も誤り。自社施設外で行う部外実施教育は、全国警備業協会等の教育訓練団体・事業協同組合・登録講習機関・複数警備業者による共同実施団体のいずれかに限定されています。個人の外部講師に自社以外の場所で教育を任せる場合は、この要件に当てはまるかを事前に確認してください。
クラウドで警備員ごとの教育記録・不足アラートを管理しておけば、外部委託分と自社実施分が入り混じっても、年間の累計時間を見落としにくくなります。記帳の手間を減らしたい方は、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)で試してみることもできます。
こうした細かい要件の適用は個々の契約・組織形態によって判断が分かれることがあるため、詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。
まとめ
- 実施者の氏名欄には、実際に教育を行った人の氏名を書く。外部講師の場合は所属先+氏名を記載するのが分かりやすい
- 外部の講師・機関が行う教育(部外実施教育)は、講義・実技訓練の方法によるものに限り時間数へ算入できる。実地教育は対象外
- 自社施設内での実施は「高度な専門知識を持つ招へい講師」、施設外での実施は「教育訓練団体・事業協同組合・登録講習機関・共同実施団体」のいずれかに限定される
- 実施者が外部の人であっても、指導教育責任者による確認欄への記名は省略できない
- 迷ったら教育時間チェッカーで区分を確認し、教育実施簿テンプレートで記載欄を整えると運用しやすい
よくある質問
Q. 外部講師に頼んだ教育も、教育実施簿の「教育を行った者」欄に書いてよいですか?
書いてください。ただし、教育時間数として算入できるのは、講義または実技訓練の方法で行われた基本教育・業務別教育で、かつ実施場所・実施者の要件(自社施設内なら高度な専門知識を持つ招へい講師、施設外なら教育訓練団体等の一定の団体)を満たす場合に限られます(施行規則38条、警察庁の解釈運用基準)。
Q. 実地教育を外部の研修会社に委託して、時間数に算入できますか?
できません。実地教育は現場でのマンツーマン方式という方法の特性上、警備業者またはその従業者以外の者が行うことは適当でないとされ、部外実施教育としての時間数算入から除外されています。実地教育は自社の指導教育責任者、または2年以上継続して当該業務に従事している警備員が行う必要があります。
Q. 外部講師が行った教育でも、自社の指導教育責任者の確認欄は必要ですか?
必要です。施行規則66条1項6号は、記載事項について指導教育責任者および実施者の双方が誤りのないことを確認する旨を付記するよう求めています。実施者が外部の講師であっても、自社の指導教育責任者による確認は省略できません。
Q. 全国警備業協会の講習を受けさせた場合、実施簿にはどう書けばよいですか?
実施者の氏名欄に、講習を担当した団体名(例:全国警備業協会○○支部)と講師の氏名を記載します。あわせて、実施年月日・内容・方法(講義・実技訓練の別)・時間数・実施場所を記載し、指導教育責任者が確認欄に記名します。教育計画書の計画に基づく実施であることも、事前に指導教育責任者が確認しておく必要があります。