結論:新任教育は「配置前」にすべて終わらせる必要がある
結論から言うと、新任教育(基本教育+業務別教育)は、警備員をその警備業務に就かせる前に完了させておく必要があります。「配置してから数週間以内にやればいい」「現場に出しながら並行して教育を進める」という運用は、法令が想定している順番と逆です。
根拠は警備業法21条2項が「警備業者は、その警備員に対し…内閣府令で定めるところにより教育を行う」と義務づけ、これを受けた警備業法施行規則38条4項が「新たに警備業務に従事させようとする警備員」という表現で時間数の表を定めていることにあります。「従事させようとする」=これから就かせようとしている段階の警備員が対象であり、すでに現場に出ている警備員の後追いの教育を指す言葉ではありません。
一方で、「1日で全部終わらせなければならない」わけではありません。何日かに分けて実施すること(分割実施)自体は規則で禁止されていません。この記事では、配置前完了の原則と、分割実施を行う際に何を記録として残せばよいかを整理します。個別の事案の適否は、最終的に管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。
なぜ「配置前」なのか:条文と警視庁の案内で確認する
警視庁の案内では、新任教育について「あくまで実際の勤務に就ける前に行うものなので、勤務が目的とならないよう留意すること」と明記されています。つまり、教育の実施日を「勤務日」として扱ってしまう(教育中の時間を現場の人員配置として使ってしまう)ことも認められない、という趣旨です。全国警備業協会の解説でも「新たに警備業務に従事する警備員は、20時間以上の新任教育を受けてから警備業務に就きます」と、教育→配置という順序で説明されています。
現場でよくあるのは、繁忙期に人手が足りず「とりあえず先輩と組ませて現場に出し、教育は後で座学だけ済ませる」という進め方です。これは業務別教育の一部を実地教育(OJT)で代替する制度(後述)とは別物です。実地教育として認められるのは、あくまで教育計画に基づいて実施内容・時間を管理された教育であり、単に人手として配置してしまった時間を後から教育扱いにすることではありません。
区分別の必要時間数(早見表)
新任教育の必要時間数は、これから就かせる業務との関係で区分ごとに変わります。施行規則38条4項の表を整理すると次のとおりです(詳しい判定条件は教育時間チェッカーでも確認できます)。
| 警備員の状況 | 教育の種類 | 必要時間 |
|---|---|---|
| 資格・経験のない一般の新人 | 基本教育+業務別教育 | 20時間 |
| 同じ区分の業務に直近3年で通算1年以上の経験あり | 基本教育+業務別教育 | 7時間 |
| 別区分の経験者・元警察官(通算1年以上) | 基本教育+業務別教育 | 13時間 |
| 他種別の検定・他区分の指導教育責任者資格あり | 業務別教育のみ | 10時間 |
| 上記+同じ業務の実務経験1年以上 | 業務別教育のみ | 3時間 |
| 機械警備業務管理者資格者を機械警備に配置 | 基本教育のみ | 10時間 |
| 上記+経験・元警察官歴1年以上 | 基本教育のみ | 3時間 |
| 就かせる業務と同じ種別の検定・指導教育責任者資格あり | ― | 免除 |
どの行に該当する場合でも、「配置前に完了させる」という原則は変わりません。時間数が短縮されるかどうかは資格・経験の有無で決まる話で、実施のタイミングとは別の論点です。
自社の隊員がどの行に当たるか、また業務別教育のうちどこまで実地教育で代替できるかを確認したい場合は、教育時間チェッカーに資格・経験を入力すると該当区分と必要時間を判定できます。
分割実施のルール:何日かけてよいか、記録はどうするか
規則が定めているのは「合計で何時間以上」という総量であり、「1回の教育で何時間以内」「何日以内に終える」という実施回数・日数の制限は定められていません。したがって、一般の新人に必要な20時間を、たとえば初日6時間・2日目7時間・3日目7時間のように複数日に分けて実施すること自体は問題ありません。多くの警備会社が、受講者の負担や講師の確保を考えて数日に分割しています。
ただし、分割実施でも守るべき条件は変わりません。
- 全日程が配置日より前に終わっていること。3日間の予定のうち1日目・2日目だけ終えた状態で現場に配置し、3日目を勤務と並行して行うことはできません。
- 各回の実施日・実施時間・教育事項・受講者を記録すること。教育実施簿(施行規則66条1項5号の書類の一つ)には教育を行った日ごとに記載するのが基本で、「20時間まとめて実施」とだけ書いて日付を1つにまとめてしまうと、立入検査で実態と記録の整合性を聞かれたときに答えにくくなります。
- 業務別教育の一部を実地教育(OJT)で代替する場合の上限は、分割の有無にかかわらず一定です。一般区分であれば、教育計画上の業務別教育時間数の2分の1(端数は30分以上1時間未満を1時間に切上げ、30分未満は切捨て)または5時間のいずれか少ない時間数までが上限です(規則38条3項備考)。実地教育の詳しい計算方法は実地教育で代替できる時間数の記事でも解説しています。
具体的な計算をしてみましょう。教育計画で業務別教育を12時間と定めた新人がいる場合、実地教育に振り替えられるのは12÷2=6時間ですが、上限の5時間を超えるため、実際に実地教育へ振り替えられるのは5時間までです。残り7時間分の業務別教育(座学・実技指導)は、配置前に別枠で実施しておく必要があります。
自社で確認しておきたい4つの手順
新しく採用した警備員を配置する前に、次の順番で確認しておくと抜け漏れを防げます。
- 区分の判定:これから就かせる業務(1号〜4号・機械警備)と、本人の検定・指導教育責任者資格・実務経験・警察官歴を照らし合わせ、上の早見表のどの行に当たるかを確認する。
- 教育計画への落とし込み:基本教育・業務別教育をそれぞれ何時間、何日に分けて実施するかを教育計画書に反映する。実地教育を使う場合はその時間数の上限も計画段階で決めておく。
- 教育の実施と記録:計画どおりに実施し、実施日ごとに教育実施簿へ記載する。分割実施の場合は、最終日の教育が終わった日付が「配置可能になった日」の目安になる。
- 配置日の設定:記録上、教育がすべて完了していることを確認したうえで配置日を決める。急な現場対応で日程を前倒ししたくなった場合ほど、この確認を飛ばさないようにする。
この4手順のうち、③の記録が紙やExcelで属人化していると、「誰の教育がいつ何時間終わっているか」を配置直前に慌てて確認する事態になりがちです。教育記録をクラウドで一元管理しておけば、警備員ごとの累積時間と不足の有無をその場で確認できます。ケイビログでは14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)でこの記録・アラート機能を試せます。
誤解しやすいポイント
- 「実地教育=現場に配置すること」ではない:実地教育は業務別教育の一部を現場で行う教育であり、教育計画・記録の管理下にあることが前提です。配置してしまった後の稼働時間を事後的に教育時間として扱うことはできません。
- 「まとめて1回で20時間」でなくてよい:分割実施は認められますが、途中の日程を残したまま配置してしまうと、その時点では新任教育が完了していない扱いになります。
- 免除区分の判定を「保有資格の有無」だけで済ませない:検定・指導教育責任者資格を持っていても、これから就かせる業務と種別・区分が違えば免除にはならず、業務別教育(10時間または3時間)が必要です。早見表の「同じ種別・区分」という条件を必ず確認してください。
判定に迷うケースや、教育計画書・実施簿の記載方法に不安がある場合は、自己判断で進めず、管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士に確認することをおすすめします。
自社の教育計画をこれから作る、または見直したい場合は、教育時間チェッカーで区分ごとの必要時間を確認したうえで計画に反映すると、抜け漏れの少ないスケジュールを組みやすくなります。
まとめ
- 新任教育(基本教育+業務別教育)は、警備員を実際の業務に就かせる前に完了させる必要がある(警備業法21条2項・施行規則38条4項)
- 教育を複数日に分けて実施すること自体は規則で禁止されていないが、全日程が配置前に終わっていることが条件
- 実地教育で代替できる時間数の上限は、分割の有無にかかわらず一定(一般区分は業務別教育時間の2分の1または5時間の少ない方)
- 分割実施の場合は、実施日ごとに教育実施簿へ記録し、最終日の完了をもって配置可能と判断する
- 資格・経験による時間短縮と、配置前完了という時期の原則は別の論点なので混同しない
区分ごとの必要時間の判定は教育時間チェッカー、教育記録の管理はケイビログの無料トライアルから確認できます。
よくある質問
Q. 新任教育を配置後に「後追い」で終わらせることはできますか?
できません。警備業法施行規則38条4項は「新たに警備業務に従事させようとする警備員」を対象に時間数を定めており、警視庁の案内でも新任教育は実際の勤務に就く前に行うものとされています。配置後にまとめて実施する運用は原則に反します。
Q. 新任教育を複数日に分けて実施してもよいですか?
問題ありません。規則は合計時間数を定めているだけで、実施回数や日数の制限はありません。ただし、分割した場合も全日程が配置日より前に終わっている必要があり、実施日ごとの記録を残すことが求められます。
Q. 分割実施の場合、教育実施簿にはどう記載すればよいですか?
実施日ごとに、実施した教育の種類(基本教育・業務別教育)、時間数、教育事項、受講者を記載するのが基本です。「合計20時間」とまとめて1行で記載するより、日付単位で記録した方が立入検査での説明がしやすくなります。
Q. 実地教育(OJT)で代替すれば、配置前教育の時間を短縮できますか?
短縮というより「振り替え」に近い制度です。業務別教育の一部を実地教育に充てられますが、上限は教育計画上の業務別教育時間数の2分の1または5時間(区分によっては2時間)のいずれか少ない時間数までです(規則38条3項備考)。詳しい計算方法は実地教育で代替できる時間数の記事で解説しています。
Q. 経験者や資格保有者でも、配置前完了のルールは変わりますか?
変わりません。経験・資格の有無で変わるのは必要な教育の種類と時間数(早見表を参照)であり、「配置前に完了させる」という実施タイミングの原則は、免除に該当しない限りすべての区分に共通します。