年度途中に警備員が入社したとき、現任教育はどうなる?結論から解説
「4月や10月など年度の途中で警備員を採用したが、その年度の現任教育はどう扱えばいいのか分からない」——警備業者の管理者や指導教育責任者からよく聞かれる悩みです。新任教育は済ませたが、同じ年度内にもう一度、現任教育として10時間を確保する必要があるのか。判断を誤ると、立入検査で記録の不備を指摘されかねません。この記事では、警備業法施行規則の条文に基づいて、年度途中入社の現任教育の考え方を整理します。
結論から言うと、警備業法施行規則第38条5項が定める現任教育の対象は「現に警備業務に従事させている警備員」であり、免除されるのは合格証明書(検定)や警備員指導教育責任者資格者証を、従事させる業務と同一の区分で保有している警備員に限られます(警備業法施行規則第38条5項柱書)。**「年度の途中に採用したから」「直前に新任教育を終えたから」という理由だけで、その年度の現任教育が条文上自動的に免除される規定はありません。**新任教育を終えて業務に就かせた時点から、その警備員は「現に警備業務に従事させている警備員」に該当するため、実務上どこまでの教育をその年度中に求めるかは、所轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)の取り扱いを個別に確認する必要がある、というのが正確な立ち位置です。
詳細説明:新任教育と現任教育、根拠条文と時間数
まず前提を整理します。警備業者は、警備業務に従事させようとする警備員に対し、業務に就かせる前に基本教育・業務別教育を合計した「新任教育」を行う義務があり(警備業法第21条2項、施行規則第38条4項)、業務に就いている警備員に対しては、毎年度(4月1日〜翌年3月31日)「現任教育」を行う義務があります(施行規則第38条5項)。警視庁の案内や全国警備業協会の解説でも、免除の対象とならない一般の警備員について「新任教育は20時間以上」「現任教育は年度ごとに10時間以上」と案内されています。
現任教育の時間数は、警備員が保有する資格や、実際に従事している業務との組み合わせによって変わります。2019年の規則改正後の内容を整理すると、次のとおりです(滋賀県警察の新旧比較資料、施行規則第38条5項の表に基づく)。
| 警備員の区分 | 現任教育の内容 | 年度ごとの時間数 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 一般の警備員(下記の免除に該当しない) | 基本教育+業務別教育 | 10時間以上 | 規則38条5項の表・一の項 |
| 1級検定合格者(合格証明書と同一区分の業務に従事) | ― | 免除 | 規則38条5項柱書 |
| 1級検定合格者(合格証明書と異なる区分の業務に従事) | 業務別教育のみ | 6時間以上 | 規則38条5項の表・二の項 |
| 2級検定合格者(該当区分に従事/それ以外いずれも) | 業務別教育のみ | 6時間以上 | 規則38条5項の表・二の項 |
| 指導教育責任者資格者証保有(同一区分の業務に従事) | ― | 免除 | 規則38条5項柱書 |
| 指導教育責任者資格者証保有(異なる区分の業務に従事) | 業務別教育のみ | 6時間以上 | 規則38条5項の表・二の項 |
新任教育についても、実地教育(現場でのOJT)による代替に上限があります。一般区分(無資格・未経験)の新任教育20時間のうち、業務別教育の部分は「業務別教育の時間数を2で除した時間数、または5時間のいずれか少ない時間数」まで実地教育に置き換えられます(規則38条3項備考)。たとえば教育計画上の業務別教育が6時間であれば、6 ÷ 2 = 3時間までが実地教育での代替上限です(5時間より少ないため3時間が採用されます)。一方、現任教育は年度を通じた継続教育という性質上、実地教育での代替という考え方自体が新任教育とは異なるため、自社の教育計画を作る際は新任・現任を混同しないことが重要です。自社の状況にどの区分・時間数が当てはまるか迷う場合は、教育時間チェッカーで警備員ごとの区分・資格・経験を入力して確認してみてください。
自社で確認・対応する手順
年度途中に警備員が入社した場合、次の順番で確認・記録していくと抜け漏れが少なくなります。
- 入社日と、実際に警備業務に就かせる日を分けて記録する。 新任教育は業務に就かせる前に完了させる義務があるため、教育完了日と就業開始日の前後関係を記録に残します。
- 新任教育の実施内容を記録する。 基本教育・業務別教育それぞれの時間数、実地教育で代替した時間数(上限を超えていないか)を教育実施簿に残します。
- その警備員の「現任教育の年度」の起算をどう扱うか、所轄の公安委員会(警察署の生活安全課・警察本部保安課など)に確認する。 前述のとおり、条文上は入社時期による自動免除規定がないため、自社の判断だけで「今年度は不要」と決めつけないようにします。
- 翌年度以降の教育計画書に、その警備員の現任教育(原則として年度ごとに10時間以上)を組み込む。 年度替わりのタイミングで抜けやすいポイントです。
- 在籍する警備員全員分を積み上げて、年度全体の必要教育時間数を把握する。 たとえば一般の警備員が5名在籍していれば、現任教育10時間 × 5名 = 延べ50時間分の実施記録が必要になる、という規模感で計画を立てます。
注意点・誤解しやすいポイント
現場でよくある誤解を3つ挙げます。
- 「新任教育をやったから、もうこの警備員には何もしなくていい」という誤解。 現任教育は毎年度発生する継続的な義務であり、新任教育を1回行えば恒久的に免除されるわけではありません(免除されるのは、資格を同一区分で保有している場合のみです)。
- 「年度途中入社なら、その年度の現任教育は自動的に免除される」という思い込み。 前述のとおり、施行規則の柱書に定める免除は資格保有者に限られ、入社時期を理由にした免除規定は条文上見当たりません。この点は都道府県ごとに運用の細部が異なり得るため、詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。
- 実地教育の代替上限を、新任教育と現任教育で同じ感覚で扱ってしまう誤解。 新任教育では業務別教育の一部を実地教育に置き換えられますが、上限の計算式(2分の1または5時間のいずれか少ない方)は区分によって異なります。教育計画書を作る段階で、どの区分の警備員かを先に確定させることが大切です。
こうした年度またぎの管理は、紙やExcelの台帳だと「誰がいつ何時間受けたか」を突き合わせるだけでも手間がかかります。教育記録をクラウドで管理できれば、警備員ごとの累積時間と不足を自動で把握できるため、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)でケイビログの使用感を確かめてみるのも一つの方法です。
まとめとして、実際に自社の警備員一人ひとりについて、区分・資格・経験の組み合わせから必要な教育時間数を確認したい場合は、教育時間チェッカーで入力してみると、該当する条文と時間数がその場で分かります。
よくある質問
Q. 年度途中に採用した警備員は、その年度の現任教育を必ず受けさせないといけませんか。
条文上、現任教育の対象は「現に警備業務に従事させている警備員」であり、免除されるのは合格証明書や指導教育責任者資格者証を同一区分で保有する場合に限られます(施行規則第38条5項柱書)。入社時期を理由にした自動的な免除規定は条文上見当たらないため、その年度中の扱いは所轄の都道府県公安委員会に個別に確認することをおすすめします。
Q. 新任教育と現任教育は、同じ年度に両方受けさせる必要がありますか。
新任教育は警備業務に就かせる前に行う一度きりの教育、現任教育は毎年度(4月1日〜翌年3月31日)継続して行う教育で、法律上の性質が異なります(施行規則第38条4項・5項)。同じ年度に両方が発生し得るケースであるかどうかも含め、都道府県公安委員会への確認が確実です。
Q. 現任教育の10時間や6時間という数字は、どの警備員にも同じですか。
いいえ、異なります。免除の対象とならない一般の警備員は年度ごとに10時間以上ですが、検定合格者や指導教育責任者資格者証の保有者は、従事する業務との組み合わせによって6時間以上、または免除になります(施行規則第38条5項の表)。詳しくは記事内の表、または教育時間チェッカーで確認してください。
Q. 実地教育で現任教育の時間数を代替することはできますか。
実地教育による代替の考え方は、主に新任教育の業務別教育部分について規則第38条3項備考で定められています。現任教育の代替の扱いは新任教育とは前提が異なるため、自社の教育計画に組み込む前に、都道府県公安委員会や顧問の社会保険労務士に確認しておくと安心です。
Q. 教育の記録はどのように残しておけばよいですか。
警備員ごとに、教育の種類(基本教育・業務別教育)、実施日、時間数、実地教育で代替した時間数を教育実施簿に記録し、いつでも提示できる状態で備え付けておく必要があります。手作業での台帳管理が負担であれば、クラウドで警備員ごとの累積時間を管理できるツールの利用も検討に値します。