「教育記録、何年残せばいいんだっけ」に結論から答えます
教育計画書や教育実施簿を毎年度作ってはいるものの、「去年の分はもう捨てていいのか」「営業所を移転するときにどこまで引き継ぐべきか」で手が止まる担当者は少なくありません。立入検査で聞かれて初めて期間があいまいだったと気づくケースもあります。この記事では、警備業法施行規則が定める書類ごとの保存期間を一覧にし、起算点(いつから数えるか)と、期間の定めがない書類の扱いまでまとめて整理します。
結論:保存期間は書類ごとに異なり、一律ではない
結論から言うと、警備業法施行規則66条2項が保存期間を定めているのは警備員名簿・指導計画書・教育計画書・教育実施簿の4種類のみで、期間も書類ごとに異なります。それ以外の備付け書類には明文の保存期間規定がありません。「全部まとめて〇年」という単純な話ではない点がつまずきやすいポイントです。
| 書類 | 保存期間 | 起算点(いつから数えるか) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 警備員名簿 | 1年間 | 当該警備員が退職した日 | 施行規則66条2項 |
| 指導計画書 | 2年間 | 実地に指導した日 | 施行規則66条2項 |
| 教育計画書 | 2年間 | 当該年度が終了した日 | 施行規則66条2項 |
| 教育実施簿 | 2年間 | 当該年度が終了した日 | 施行規則66条2項 |
| 確認票(欠格事由の確認結果) | 明文規定なし | ― | ― |
| 護身用具の一覧 | 明文規定なし | ― | ― |
| 契約に関する概要書面 | 明文規定なし | ― | ― |
| 苦情処理簿 | 明文規定なし | ― | ― |
在籍中の警備員の名簿は当然備え付けたままでよく、1年というのは退職後の話です。教育計画書・教育実施簿は「年度(教育期)が終わった日」を起点に2年間、営業所に置いておく義務があります。
同じ2年でも指導計画書だけは起算点が違う点に注意してください。条文は「前項第四号に掲げる書類は、実地に指導した日から二年間」と定めており、年度末ではなく実地指導を行った日ごとに2年を数えます。指導は年度単位でまとめて行うものではなく都度実施するため、1冊のファイルを年度末起算で処分すると、直近の指導記録まで一緒に捨ててしまう恐れがあります。
なぜこの期間なのか:条文の位置づけと教育時間の実態
警備業法45条は、警備業者に営業所ごとの帳簿書類の備付けを義務づけ、その具体的な種類と一部の保存期間を施行規則66条に委任しています。教育に関する書類の保存期間が定められているのは、教育の実施状況が単発では確認できず、複数年度にまたがって「継続的に義務を果たしているか」を検査で確認する必要があるためです。
たとえば現任教育は、施行規則38条5項により毎年度(4月1日〜翌年3月31日)基本教育・業務別教育を合わせて10時間以上が原則です。この10時間には資格や経歴による軽減があり、実地教育による代替は業務別教育時間の2分の1までという上限もあります(同条)。仮に業務別教育が6時間なら、実地教育で代替できるのは6÷2=3時間までで、残りは講義や実技など実地以外の方法で行う必要があります。この「何時間分をどの方法で行ったか」を裏づけるのが教育実施簿であり、単年度の記録だけでなく前年度分も含めて保存が必要になるのは、検査官が年度をまたいだ実施状況を確認できるようにするためです。自社の隊員が何時間の教育を必要とするかは、資格・経歴を入力するだけで判定できる教育時間チェッカーで確認できます。
自社で確認・対応する3つの手順
- 保存すべき書類と期間を洗い出す:上表を使い、営業所に置いてある備付け書類それぞれについて「いつまで保存する必要があるか」をリストアップします。特に教育計画書・教育実施簿は年度ごとにファイルが増えていくため、直近2年度分+当年度分が揃っているかを確認します。
- 起算点を年度で管理する:教育計画書・教育実施簿は「年度終了日」が起算点なので、4月に入った時点で「2年度前の3月末で保存義務が切れた分」が明確になります。年度替わりのタイミングで棚卸しをルール化すると、うっかり早期廃棄・不要な長期保管の両方を防げます。
- 記録が実際の必要時間を満たしているかもあわせて点検する:保存期間だけでなく、記録されている時間数が法定の必要時間(新任・現任それぞれ)を満たしているかも同時に確認しておくと、立入検査の指摘を未然に防げます。年度・区分を選ぶだけで記載事項を満たした様式を作れる教育計画書テンプレートを使えば、この棚卸しと並行して次年度分の計画も整えられます。
誤解しやすいポイント
- 「2年」を暦年(1月〜12月)と勘違いする:教育計画書・教育実施簿の起算点は暦年ではなく「当該年度が終了した日」=原則3月31日です。教育期の考え方に合わせて数えないと、実際より早く廃棄してしまうことがあります。
- 2年の3書類をまとめて年度末起算で処分する:上表のとおり指導計画書だけは「実地に指導した日」が起算点です。教育関連と同じ棚に置いていると年度末起算で一緒に処分しがちなので、指導の記録は実施日ごとに管理します。
- 在籍中の警備員の名簿まで期間で区切ってしまう:1年の保存義務は退職後の話であり、在籍中の名簿を1年で入れ替える必要はありません。
- 期間の定めがない書類を「すぐ捨ててよい」と解釈する:確認票・護身用具の一覧・契約概要書面・苦情処理簿には明文の保存期間規定がありませんが、規定がないことは「保存不要」を意味しません。特に苦情処理簿は、対応の経過をたどれるよう長期間保管しておくのが実務上無難です。
- 紙の保存にこだわりすぎる:施行規則67条により、記載事項が電磁的方法で記録され、必要に応じて直ちに表示できる状態であれば、書面に代えることができます。保存期間の管理も、クラウドで年度ごとにフォルダ分けしておけば棚卸しが容易になります。教育記録をクラウドで管理し不足も自動でアラートする仕組みは、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)で試すことができます。
保存期間の管理に自信が持てない場合や、営業所ごとに運用がばらついている場合は、詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。自己判断だけで期間を短縮すると、立入検査での指摘につながりかねません。
まとめ
- 保存期間が明文で定められているのは警備員名簿(退職後1年間)・指導計画書(実地に指導した日から2年間)・教育計画書・教育実施簿(いずれも年度終了後2年間)の4種類(施行規則66条2項)
- 起算点は書類ごとに異なり、教育計画書・教育実施簿は「年度終了日」、指導計画書は「実地に指導した日」、名簿は「退職日」
- 確認票・護身用具の一覧・契約概要書面・苦情処理簿には明文の保存期間規定がなく、規定がないからといって早期廃棄してよいわけではない
- 年度替わりのタイミングで「保存義務が切れた分」を棚卸しするルールを決めておくと、廃棄漏れ・過剰保管の両方を防げる
- 保存期間の管理と教育記録の不足チェックは、まず教育計画書テンプレートや教育時間チェッカーで自社の状況を確認するところから始められる
よくある質問
Q. 教育実施簿は何年前の分まで残しておく必要がありますか?
当該年度が終了した日から2年間です(施行規則66条2項)。たとえば2025年度(2026年3月31日終了)分は、2028年3月31日まで営業所に備え付けておく必要があります。
Q. 警備員名簿は退職者の分もずっと保存するのですか?
いいえ。退職した警備員の名簿は、退職後1年間の保存で足ります(施行規則66条2項)。ただし退職と同時に削除するのではなく、1年間は残しておく必要があります。
Q. 保存期間の定めがない書類は、いつ捨ててもよいのですか?
法令上の明文規定がないことと、実務上いつ捨ててもよいことは別です。特に苦情処理簿は苦情対応の経過をたどれる状態を保つ観点から、長期間の保管が無難とされています。判断に迷う場合は管轄の公安委員会に確認してください。
Q. 教育計画書と教育実施簿を紙でなくクラウドで保存してもよいですか?
認められています。施行規則67条により、記載事項が電磁的方法で記録され、必要なときに直ちに表示・書面化できれば、紙の書面に代えることができます。年度ごとにフォルダを分けて管理すると、保存期間の棚卸しもしやすくなります。
Q. 保存期間が切れた古い記録はどう扱えばよいですか?
保存義務が切れた記録を保持し続けること自体は問題ありませんが、個人情報を含むため、廃棄する場合は復元できない方法で処分するなど、社内の情報管理ルールに沿って扱うことをおすすめします。