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警備員教育の時間は労働時間?賃金の支払い義務と実務

運営・編集:ケイビログ編集部

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教育時間チェッカーで必要時間を確認する

「教育の時間にも給料を払うのか」「研修中は時給を下げてもよいのか」——警備員教育の担当をしていると、現場からもコストを見る側からも、この質問が必ず出てきます。教育時間は警備業法で義務づけられている一方、賃金のルールは労働基準法の管轄で、根拠になる法律が別々なので判断に迷いやすい論点です。この記事では、法定教育の時間が労働時間にあたるのかどうかを一次情報で確認し、年度あたりいくら分の人件費を見込むべきか、割増賃金が必要になるのはどんな場面かまでを整理します。

結論:法定教育の時間は労働時間にあたり、賃金の支払いが必要です

結論から言うと、警備業法21条2項と警備業法施行規則38条にもとづく新任教育・現任教育は、警備業者に実施が義務づけられた教育です。参加が業務上義務づけられている教育訓練の時間は労働時間として扱われるため、その時間に対応する賃金を支払う必要があります。

判断の根拠は警備業法ではなく、労働基準法側にあります。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義したうえで、労働時間として扱わなければならない時間の例として「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間」を明示しています(大阪労働局:ガイドライン本文)。

法定教育は「受けなくてもよい自由参加の勉強会」ではなく、受けさせなければ警備員をその業務に就かせられない性質のものです。したがって、この例示にそのまま当てはまります。教育中だけ賃金を支払わない、あるいは時給を最低賃金未満に下げるといった運用は、労働基準法上のリスクを抱えることになります。

年度あたり何時間分の賃金を見込むべきか

支払う賃金の総量は、教育時間の法定量から逆算できます。2026年時点の規定では、警備業法施行規則38条1項により、警備員の資格・経験と従事させる業務の組み合わせで必要時間が変わります。警視庁が公表している警備員に対する教育時間の区分にしたがって整理すると、次のようになります。

対象となる警備員新任教育(就業前)現任教育(年度ごと)
一般の警備員(経験・資格なし)基本教育・業務別教育あわせて20時間以上基本教育・業務別教育あわせて10時間以上
過去に同種の警備業務の経験がある者基本教育・業務別教育あわせて7時間以上基本教育・業務別教育あわせて10時間以上
1級検定合格者(合格した種別の業務に従事)免除免除
1級検定合格者(合格した種別と異なる業務に従事)業務別教育10時間以上年度ごとに6時間以上

現任教育の年度は4月1日から翌年3月31日までで、この期間内に必要時間を満たす必要があります。

人件費に落とすと計算はごく単純です。一般の警備員が5名在籍していて全員が現任教育の対象なら、必要な教育は 10 × 5 = 50時間分になります。この50時間は労働時間なので、たとえば平均時給が1,200円の事業所であれば 1200 × 50 = 60000円が、年度あたりの現任教育にかかる直接の賃金です。ここに新任者が加われば、1人につき20時間分(経験者なら7時間分)が上乗せされます。

自社の警備員それぞれが新任・現任で何時間必要か、免除や軽減の区分に当てはまるかを確認したい方は、教育時間の判定ツールで資格・経歴・業務区分を選ぶと法定時間数を無料で確認できます。人数分の合計時間が出れば、そのまま予算の根拠になります。

割増賃金が必要になるのはどんな場面か

教育時間が労働時間である以上、その時間の置き方によっては割増賃金の対象になります。労働基準法32条は1日8時間・1週40時間の法定労働時間を定め、同法37条はこれを超える時間外労働と深夜業(原則として午後10時から午前5時まで)、法定休日の労働について割増賃金の支払いを義務づけています。

警備業で問題になりやすいのは、次の3つの置き方です。

勤務のあとに教育を行う場合。 8時間の隊務に続けて2時間の教育を実施すれば、その2時間は法定労働時間を超えるため時間外労働の割増が必要です。教育を「勤務外の自己研鑽」と呼び替えても、実施が義務づけられている以上は扱いが変わりません。

明け方や深夜帯に教育を組む場合。 交替制の現場では、隊員が集まりやすい深夜や早朝に教育を設定することがあります。深夜業の時間帯に重なる部分については、深夜の割増賃金が発生します。

休日に集合教育を行う場合。 法定休日に出社させて教育を行えば休日労働の割増が必要になり、法定外休日であっても週40時間を超えれば時間外労働として扱われます。

割増率は労働基準法37条と同条にもとづく政令で定められており、時間外・深夜は2割5分以上、法定休日は3割5分以上です。教育の実施日と時間帯を決める段階で、割増の有無まで含めて設計しておくと、あとから賃金台帳を修正する手間を避けられます。

自社で確認する手順

順番に見ていくと、確認すべきことは多くありません。

  1. 教育実施簿と勤怠記録を突き合わせる。 施行規則66条1項6号の教育実施簿に記録した実施日・時間と、同じ日の勤怠記録が整合しているかを確認します。教育実施簿には「教育を行った日時」が残るため、賃金が支払われていない教育時間があれば、この2つを並べた時点で見えてきます。
  2. 時間外・深夜・休日に重なっている教育を洗い出す。 実施簿の日時を見れば、割増の対象になる教育が特定できます。
  3. 実地教育の扱いを確認する。 実地教育(現場での実務を通じた教育)は、業務別教育の時間数を2で除した時間数と5時間(経験者は2時間)のいずれか少ない方が上限です。業務別教育が6時間であれば 6 ÷ 2 = 3時間までを実地教育に振り替えられます。実地教育の時間も当然に労働時間なので、通常の隊務と重ねて二重にカウントしていないかを見ておくと安全です。
  4. 就業規則・賃金規程の記載を確認する。 教育時間の賃金について「別途定める」とだけ書かれている場合、実態と規程がずれていないかを点検します。

なお、個別の勤務形態(変形労働時間制の採用や手待時間の扱いなど)によって結論が変わることがあります。詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。

年度の教育計画を立てる段階で必要時間を把握しておくと、割増になる時間帯を避けた組み方ができます。教育時間の判定ツールで区分ごとの時間数を確認し、そのまま年間の割り振りを検討してみてください。教育の実施記録そのものをクラウドで管理したい場合は、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)で実際の記帳の流れを試せます(無料で試す)。

誤解しやすいポイント

eラーニングなら労働時間ではない、という誤解。 実施方法が集合研修か電磁的方法かは、労働時間かどうかの判断とは関係ありません。会社が受講を指示している以上、視聴に要した時間は労働時間です。自宅での受講を認める場合は、開始・終了の時刻を記録できる仕組みにしておかないと、実態の把握が難しくなります。

「教育手当」を払っているから割増は不要、という誤解。 定額の手当を支給していても、それが割増賃金の額に達していなければ差額の支払いが必要です。手当の性格(何に対する対価か)を賃金規程で明確にしておくことが前提になります。

教育を受けさせないという選択肢はない。 賃金負担を理由に教育を省略すると、警備業法違反として指示処分や営業停止の対象になり得ます。警備業法21条2項の教育義務は、人手が足りない事業所にも同じように適用されます。

現任教育は年度単位で見る。 入社月にかかわらず4月1日から翌年3月31日が1つの単位なので、年度後半に採用した警備員の扱いを取り違えると、年度末に不足が生じます。

まとめ

  • 警備業法の法定教育は業務上義務づけられた教育訓練にあたり、その受講時間は労働時間として賃金の支払いが必要です(厚生労働省ガイドライン)。
  • 年度あたりの賃金は法定時間から逆算できます。一般の警備員5名なら現任教育だけで 10 × 5 = 50時間分が目安です。
  • 勤務後・深夜・休日に教育を置くと、労働基準法37条の割増賃金が発生します。実施日時の設計段階で確認しておくと後戻りがありません。
  • 教育実施簿の日時と勤怠記録を突き合わせれば、支払い漏れは机上で発見できます。
  • eラーニングでも労働時間である点、教育手当が割増賃金の代わりにはならない点が、特に取り違えの多い箇所です。

まずは自社の警備員が何時間の教育を必要としているかを確認し、その時間数を年間の人件費と教育計画の両方に反映させるところから始めてください。

よくある質問

Q. 教育中の時給を通常勤務より低く設定してもよいですか?

教育時間に適用する賃金額を通常の隊務と別に定めること自体は、就業規則・賃金規程で明確にしていれば直ちに違法とはいえません。ただし、その額が地域の最低賃金を下回ることは認められず、割増賃金の計算基礎にも影響します。運用を変える前に、賃金規程の記載と実態が一致しているかを社会保険労務士に確認しておくと安全です。

Q. 入社前の人に新任教育を受けさせた場合も賃金は必要ですか?

新任教育は「警備業務に従事させる前」に行う教育ですが、会社の指示で参加させている以上、労働時間として扱うのが原則です。採用が内定した段階で雇用契約の開始日を教育開始日に合わせるなど、契約関係を先に整理しておくと処理が明確になります。判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署にも確認してください。

Q. 部外の講習に参加させた時間はどう扱えばよいですか?

会社が受講を指示して参加させた講習であれば、その時間は労働時間です。受講料や交通費の負担とは別の論点として、拘束した時間分の賃金が発生します。なお、部外の研修を法定の教育時間に算入できるかどうかは警備業法側の要件(実施者や内容の要件)を満たすかで決まるため、労働時間の扱いとは切り分けて考える必要があります。

Q. 教育実施簿に賃金の記録も残す必要がありますか?

警備業法施行規則66条1項6号が求めているのは教育の実施に関する記録で、賃金の記録は労働基準法108条の賃金台帳が受け持ちます。書類としては別ですが、立入検査や労働基準監督署の調査では両方の整合が見られることがあるため、実施日時が一致するように運用しておくことをおすすめします。

Q. 教育時間が法定を超えた場合、超えた分の賃金はどうなりますか?

法定の20時間・10時間はあくまで下限で、それを超えて実施した教育の時間も労働時間です。超過分についても通常どおり賃金の支払いが必要で、法定労働時間を超えれば割増の対象にもなります。教育の密度を上げること自体は問題ありませんが、時間数の設計はそのまま人件費に跳ね返る点を見込んでおいてください。

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