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苦情処理簿とは?警備業者に義務づけられる苦情の解決と記録

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苦情処理簿とは何か

警備業務の現場では、「警備員の対応が高圧的だった」「誘導の際に通行の邪魔になった」「資材搬入時の騒音がうるさい」など、依頼者や周辺住民から苦情が届くことがあります。こうした声を口頭対応で済ませるのではなく、受け付け・記録・原因究明・改善措置の実施まで一連で追うことが法令上の義務です。その記録媒体が「苦情処理簿」です。本記事では、苦情処理簿の根拠条文・必須記載事項・立入検査対策を実務に沿って解説します。

結論から言うと——苦情処理簿は「義務」、かつ保存期間の定めなし

結論から言うと、苦情処理簿は警備業法施行規則66条1項8号に基づき、営業所ごとに備え付けが義務づけられた法定書類です。苦情が1件も発生していなくても、書式が存在しない状態では備付け義務違反になります。

また、教育計画書・教育実施簿には規則66条2項で「教育期の終了後2年間」の保存義務が定められているのに対し、苦情処理簿には法令上の保存期間の規定がありません。廃棄の法的根拠がないため、実務上は事実上の永久保存として管理するのが通例です。

苦情処理義務の根拠条文

警備業法第20条(苦情の解決)

警備業法20条は次のように定めています。

警備業者は、常に、その行う警備業務について、依頼者等からの苦情の適切な解決に努めなければならない。

条文中の「依頼者等」の解釈が実務上の重要ポイントです。警察庁の解釈運用基準では、「依頼者」のほか、警備業務実施場所の周辺住民・通行者等も含むと示されています。施設の来場者、近隣住民、工事現場付近の通行者からの声も、契約先からのクレームと同様に処理・記録の対象になります。

警備業法第45条・施行規則第66条(書類の備付け)

書類を備え付ける根拠は警備業法45条で、具体的な書類の種類は警備業法施行規則66条1項各号に列挙されています。苦情処理簿は同条1項8号に定められており、法定備付書類8種類の一つです。

#書類名根拠
1警備員名簿規則66条1項1号
2確認票(欠格事由確認)規則66条1項2号
3護身用具の一覧規則66条1項3号
4指導計画書規則66条1項4号
5教育計画書規則66条1項5号
6教育実施簿規則66条1項6号
7警備業務の契約概要書面規則66条1項7号
8苦情処理簿規則66条1項8号

苦情処理簿の記載事項(7項目)

警備業法施行規則66条1項8号は、苦情処理簿に次の7項目を記載することを定めています(2026年時点の規定です)。

  1. 苦情を申し出た者の氏名
  2. 苦情を申し出た者の連絡先
  3. 苦情の内容
  4. 原因究明の結果
  5. 苦情申出者に対する弁明の内容
  6. 改善措置
  7. 苦情処理を担当した者の氏名

立入検査では書類の有無だけでなく、記載の具体性が確認されます。「現場責任者が謝罪した」だけでは不十分で、「なぜそうなったか(原因)」と「何を変えることで再発を防ぐか(改善措置)」がセットで書かれていることが実務的な合格水準です。

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苦情処理から教育改善へつなげる実務フロー

苦情処理簿の本来の目的は記録することではなく、改善措置を実施して再発を防ぐことです。実務では次のフローで進めます。

  1. 依頼者・周辺住民等から苦情を受け付ける
  2. 受付日・申出者情報・内容を苦情処理簿に記録
  3. 原因を調査し、結果を簿に記入
  4. 弁明または説明の内容を記入
  5. 改善措置を決定・実施し、担当者名とともに簿に記入
  6. 再発リスクがある場合は、次の教育計画に反映

6のフローが管理の仕上げです。例えば「施設利用者への誘導時の言葉遣いに関する苦情」が記録された場合、改善措置として「現任教育の基本教育で接遇研修を実施する」と決定したとします。現任教育(すでに警備業務に就いている警備員に毎年度行う教育)は年度合計10時間以上が必要で(規則38条5項)、業務別教育を6時間と設定している場合、実地教育での代替は 6 ÷ 2 = 3時間が上限です(規則38条)。接遇研修を業務別教育の座学3時間として組み込むケースでは、残り3時間を実地または座学で充当する計画を立てることになります。

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自社で確認・整備する手順

立入検査に備えて、次の手順で整備します。

ステップ1:書式を用意する

法令で書式は指定されていないため、A4に7項目の欄を設けた任意書式でかまいません。「受付日・申出者氏名・連絡先・内容・原因・弁明・改善措置・担当者名」の列を持つ横長の台帳形式や、1件1枚の単票形式がよく使われます。

ステップ2:苦情対象の範囲を社内周知する

「依頼者等」の広い解釈を踏まえ、周辺住民・通行者・施設利用者からの声も対象と現場担当者に周知します。「契約先以外は関係ない」という思い込みがあると、実際に苦情があっても記録されないまま終わります。

ステップ3:営業所ごとに備え付ける

警備業法45条は「営業所ごと」の備付けを求めています。本社にまとめてあるだけでは各営業所での備付け義務を満たせず、不備と指摘されることがあります。

ステップ4:処理完了まで記録を追う

受け付けたまま「対応中」の状態で放置すると、7項目が未完成のまま残ります。苦情1件につき、原因究明・弁明・改善措置まで完結させてから処理完了とします。

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注意点・誤解しやすいポイント

苦情ゼロでも書式は必要

苦情が発生していない期間でも、書式は備え付いていなければなりません。「0件だから不要」は備付け義務違反です。空欄でも書式自体を営業所に置いておく必要があります。

SNS・口コミ投稿も対象になりうる

近年の解釈では、インターネット上の投稿も「依頼者等からの苦情」に準じて記録・対応する考え方が広がっています。業務に関する批判的な投稿を発見した場合、内容を記録して対応を検討する対象とするのが無難です。

保存期間の誤解

「保存期間の規定がないから古いものは捨ててよい」という判断は慎重にしてください。法令上の廃棄根拠がなく、立入検査では過去の苦情処理の実績が確認対象になることもあります。

担当者氏名を空欄にしない

7項目のうち抜け落ちやすいのが「苦情処理を担当した者の氏名」です。苦情を直接対応した警備員ではなく、処理全体を担当した責任者の氏名を記入します。

個別の書式・記載例・立入検査への具体的な対応については、管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。なお、施行規則は改正されることがあるため、最新の内容はe-Gov法令検索でご確認ください。

まとめ

  • 苦情処理簿は警備業法施行規則66条1項8号に定められた法定備付書類で、営業所ごとの備付けが義務
  • 警備業法20条の「依頼者等」には依頼者に加え、周辺住民・通行者等も含まれる(警察庁解釈運用基準)
  • 記載事項は7項目——氏名・連絡先・内容・原因・弁明・改善措置・担当者名を具体的に記入
  • 保存期間の法令上の明示規定なし——廃棄根拠がないため事実上の永久保存として管理
  • 苦情対応で判明した課題は、次の教育計画にフィードバックして再発防止につなげる

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よくある質問

Q. 苦情が1件もなければ苦情処理簿は不要ですか?

いいえ。警備業法施行規則66条1項8号は苦情処理簿を「備え付ける」ことを義務づけています。苦情件数がゼロであっても書式自体は営業所に備え付いていなければならず、「0件だから不要」とはなりません。

Q. 契約先(依頼者)からの苦情だけ記録すればよいですか?

いいえ。警備業法20条の「依頼者等」は依頼者に加え、警備業務実施場所の周辺住民・通行者等も含むと解釈されています(警察庁解釈運用基準)。契約外の第三者からの声も処理・記録の対象です。

Q. 苦情処理簿の保存期間はどれくらいですか?

法令上の明示的な保存期間は定められていません。教育計画書・教育実施簿に「教育期終了後2年」の規定があるのとは異なり、苦情処理簿に期間規定はないため、実務上は廃棄の根拠がなく事実上の永久保存として扱われます。

Q. 口頭で対応・解決した苦情も記録が必要ですか?

必要です。苦情を受け付けた時点で苦情処理簿への記録義務が生じます。「口頭で謝罪して済んだ」場合でも、7項目の記載を完成させることが求められます。

Q. 電子ファイル(Excelやクラウドなど)での管理は認められますか?

警備業法施行規則67条により、電磁的記録(Excelやクラウド等)での保管も認められています。ただし、立入検査時に直ちに表示・書面化できる状態にしておく必要があります。

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