結論:交通誘導・雑踏警備は「場所ごとに検定合格警備員1人以上」が基本ルール
交通誘導警備や雑踏警備の現場に、どの級の検定合格警備員を何人配置すればよいのか、自社のやり方で立入検査に通るのか不安という管理者は少なくありません。結論から言うと、雑踏警備業務・交通誘導警備業務のうち一定の種別については、警備を行う場所(区域に分かれる場合は区域ごと)に、1級または2級の検定合格警備員を1人以上配置する義務があります。根拠は警備業法第18条と、これを受けた警備員等の検定等に関する規則(平成17年国家公安委員会規則第20号)第2条の別表です。どの道路・どの場所が対象になるかは業務の種別によって異なるため、次章以降で条文に沿って整理します。
なぜ配置義務があるのか(根拠条文と対象業務)
警備業法18条は、実施に専門的な知識・技能を要し、事故が発生すれば不特定または多数の人の生命・身体・財産に危険が及ぶおそれのある警備業務について、国家公安委員会規則で種別を定め、その種別ごとに検定合格警備員(警備業法23条4項の合格証明書の交付を受けた警備員)でなければ従事させてはならないと定めています。対象になるのは警備業法2条1項1号〜3号の業務(施設警備・雑踏警備や交通誘導警備・運搬警備)で、4号の身辺警備(ボディーガード業務)はこの配置義務の対象区分には含まれていません。
この18条自体に直接の罰金・懲役は定められていませんが、配置基準を満たさない状態が是正されない場合、公安委員会は49条1項に基づき営業の全部または一部停止を命じることができ、この停止命令に違反すると56条2項により1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります。立入検査では、現場への配置状況と警備員名簿の記載内容(検定の交付公安委員会・交付年月日・番号等)が合わせて確認されます。
雑踏警備業務・交通誘導警備業務の配置基準
具体的な配置基準は、警視庁が公表している案内(警備員等の検定等に関する規則第2条の別表に基づくもの)で確認できます。要点を整理すると次のとおりです。
| 業務区分 | 対象になる場所・道路 | 配置する検定合格警備員 | 人数の基準 |
|---|---|---|---|
| 雑踏警備業務 | 警備を行う場所(適正な実施のため2以上の区域に分かれる場合は区域ごと) | 1級または2級検定合格警備員 | 場所・区域ごとに1人以上 |
| 交通誘導警備業務 | 高速自動車国道または自動車専用道路 | 1級または2級検定合格警備員 | 業務を行う場所ごとに1人以上 |
| 交通誘導警備業務 | 都道府県公安委員会が道路における危険防止のため必要と認めて指定する道路 | 1級または2級検定合格警備員 | 業務を行う場所ごとに1人以上 |
交通誘導警備業務のうち「都道府県公安委員会が指定する道路」は、都道府県ごとに告示で個別に指定されます。自社が請け負う現場の道路が指定対象かどうかは、現場所在地を管轄する都道府県警察(生活安全部局)の告示・案内で確認するのが確実です。配置基準は改正されることがあり、雑踏警備業務の基準も過去に見直しが行われています。自社の現場が最新の基準に当てはまるかどうか判定したい場合は、教育時間チェッカーで警備員ごとの検定・経験の状況を入力し、現任・新任それぞれの必要教育時間とあわせて整理しておくと、配置と教育記録の両方を一度に点検できます。
配置する検定合格警備員は教育義務も軽くなる
配置基準を満たすために検定合格警備員を置くと、その警備員自身の教育義務も変わります。新たに交通誘導警備業務に就かせる警備員が、その業務と同じ種別の検定(1級・2級いずれでも可)を持っている場合、新任教育そのものが不要です(施行規則38条4項柱書)。すでにその業務に従事している現任の警備員については、1級検定合格者(同一種別)はその年度の現任教育自体が不要になり、2級検定合格者(同一種別)は基本教育が不要になったうえで業務別教育のみ6時間で足ります(同条5項柱書・表2項)。
実地教育(OJT)による代替にも上限があります。たとえば検定も経験もない一般の新任教育(基本教育+業務別教育で合計20時間)の場合、業務別教育のうち実地教育に振り替えられるのは「教育計画上の業務別教育時間数の2分の1、または5時間のいずれか少ない時間数」までです(施行規則38条3項備考1号)。仮に教育計画で業務別教育に12時間を割り当てたとすると、12 ÷ 2 = 6時間ではなく、規則の上限である5時間までしか実地代替できません。配置基準を満たすために無資格の警備員を複数名従事させる場合、現任教育は1人あたり年10時間が基本なので、5名を交通誘導警備に配置するなら 10 × 5 = 延べ50時間分の実施記録を年度内に残す必要がある計算になります。
自社で確認・対応する手順
- 現場の業務区分を確認する:請け負う業務が雑踏警備業務か、交通誘導警備業務のうち高速道路・自動車専用道路または公安委員会指定道路に当たるかを確認する
- 指定道路かどうかを確認する:都道府県公安委員会の告示で、現場の道路が交通誘導警備業務の配置義務対象に指定されているかを確認する
- 検定の級と種別を突合する:配置予定の警備員が持つ検定が、当該現場の業務種別(雑踏・交通誘導)と一致する1級または2級かを確認する
- 区域分けと人数を確認する:現場が複数区域に分かれる場合は、区域ごとに検定合格警備員が1人以上いるかを確認する
- 名簿・教育記録を更新する:検定の交付公安委員会・交付年月日・番号を名簿に反映し、教育区分(免除・軽減)を記録に残す
注意点・誤解しやすいポイント
よくある誤解の一つが、「検定合格警備員であれば種別を問わず配置基準を満たせる」という思い込みです。配置基準は業務の種別(雑踏警備業務・交通誘導警備業務)ごとに定められているため、たとえば施設警備業務の検定しか持っていない警備員を交通誘導の現場に置いても、この配置基準は満たせません。もう一つ見落とされがちなのが、「現場の警備員全員が検定を持つ必要がある」わけではない点です。基準が求めているのは区域ごとに最低1人以上の配置であり、他のメンバーは無資格でも業務自体には従事できます(別途、新任・現任教育の実施は必要です)。
教育時間の免除・軽減と配置基準は連動していますが別の制度である点にも注意してください。検定合格警備員を配置すれば本人の教育負担は軽くなりますが、配置基準を満たしたこと自体が教育義務を免除するわけではなく、他のメンバーの新任・現任教育は通常どおり必要です。自社の現場でどの警備員にどの教育が必要かを一度整理したい場合は、教育時間チェッカーで区分・検定・経験年数を入力して確認してから、配置計画に反映すると漏れを防ぎやすくなります。個別の現場が配置基準の対象かどうか、指定道路の範囲などの最終判断は、詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。
教育記録や検定の保有状況を警備員ごとにまとめて管理したい場合は、14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)でクラウド管理を試すこともできます。
まとめ
- 雑踏警備業務・交通誘導警備業務の一部区分では、場所(区域)ごとに1級または2級の検定合格警備員を1人以上配置する義務がある(警備業法18条、検定等に関する規則2条別表)
- 交通誘導警備業務の対象は、高速自動車国道・自動車専用道路と、都道府県公安委員会が指定する道路
- 配置する検定合格警備員自身の新任・現任教育は、種別が一致すれば免除または軽減される(施行規則38条4項・5項)
- 配置基準は「区域ごとに最低1人」であり、現場の全員に検定が必要なわけではない
- 現場の道路指定・適用区分の最終確認は、管轄の都道府県公安委員会や社会保険労務士に相談する
まずは自社の現場がどの業務区分・道路指定に当てはまるかを洗い出し、配置する検定合格警備員と教育記録をひとつの台帳で追えるようにしておくと、立入検査の前でも慌てずに済みます。
よくある質問
Q. 検定を持っていない警備員だけで交通誘導警備を行うことはできますか?
高速自動車国道・自動車専用道路、または都道府県公安委員会が指定する道路で行う交通誘導警備業務については、場所ごとに1級または2級検定合格警備員を1人以上配置する必要があります(検定等に関する規則2条別表)。それ以外の一般道路での交通誘導警備には、この配置義務自体はかかりません。ただし新任・現任教育は検定の有無にかかわらず必要です。
Q. 雑踏警備の「区域」はどうやって区切るのですか?
警備を行う場所の適正な実施を確保する上で2以上の区域に区分される場合に、区域ごとの配置が必要になります。具体的な区切り方は会場の規模や人の流れ、配置する警備員数などを踏まえて個別に判断されるため、詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)にご確認ください。
Q. 1級検定合格警備員と2級検定合格警備員のどちらを配置してもよいのですか?
雑踏警備業務・交通誘導警備業務のいずれも、配置基準上は1級・2級のどちらでも配置義務を満たせます(検定等に関する規則2条別表)。ただし本人の現任教育については、1級(同一種別)なら現任教育自体が不要、2級(同一種別)なら業務別教育のみ6時間と、級によって軽減の幅が異なります(施行規則38条5項)。
Q. 配置基準に違反すると、すぐに罰金や懲役の対象になりますか?
警備業法18条自体に直接の罰則はありません。違反状態が是正されない場合、公安委員会の営業停止命令(49条1項)の対象になり得、その命令に違反すると初めて56条2項の罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)が科されます。とはいえ立入検査では配置状況が確認対象になるため、罰則の有無にかかわらず日頃からの点検が必要です。
Q. 新しく請け負った現場が公安委員会指定道路かどうか、どこで確認できますか?
都道府県公安委員会が告示で指定するため、現場所在地を管轄する都道府県警察のウェブサイトや、生活安全部局(警備業担当係)への問い合わせで確認できます。指定の有無や範囲は都道府県ごとに異なり、見直しが行われることもあるため、契約のたびに最新の告示を確認することをおすすめします。