2号業務(交通誘導・雑踏警備)の教育実施簿、何を書けばいいのか
「教育実施簿」という名前は知っていても、交通誘導警備や雑踏警備(2号業務)に配置する警備員について、具体的に何を・どの時間数で記入すればよいのか判断に迷う方は少なくありません。立入検査で指摘されやすいのも、まさにこの記入内容と時間数の整合性です。本記事では、2号業務に絞って根拠条文・記入項目・時間数の計算例を整理します。
結論:記入項目7点+確認欄、時間数は新任20時間・現任10時間が基準
結論から言うと、2号業務の教育実施簿には警備業法施行規則第66条第1項第6号が定める次の7項目を記入し、指導教育責任者と実施者が「記載事項に誤りがないこと」を確認した旨を付記する必要があります。
- 教育を実施した年月日
- 教育の内容(基本教育・業務別教育のどちらか、教育事項)
- 教育の方法(講義・実技訓練の別)
- 時間数
- 実施場所
- 実施者の氏名
- 教育の対象となった警備員の氏名
教育の中身は同規則第38条の区分に沿い、「基本教育」と、2号業務(交通誘導・雑踏警備)に特有の「業務別教育」の2種類に分けて記入します。時間数は、警備員の資格・経験によって新任教育(これから2号業務に就かせる場合)で7〜20時間、現任教育(すでに就いている警備員に毎年度行う場合)で6〜10時間と変わります。以下、順に根拠条文つきで説明します。
2号業務の教育事項と時間数はどう決まるか
業務別教育の教育事項(施行規則38条3項の表)
2号業務(交通誘導・雑踏警備)の業務別教育は、次の6項目を内容とすることが定められています。
- 当該警備業務を適正に実施するため必要な道路交通関係法令に関すること
- 車両及び歩行者の誘導の方法に関すること
- 人又は車両の雑踏する場所における雑踏の整理の方法に関すること
- 当該警備業務を実施するために使用する各種資機材の使用方法に関すること
- 人若しくは車両の雑踏する場所等における負傷等の事故の発生に際してとるべき措置に関すること
- その他当該警備業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に関すること
基本教育(新任なら5項目、現任なら3項目)は業務区分に関わらず共通です。実施簿には、この教育事項のどれを実施したかが分かる形で内容を記入します。
新任教育・現任教育の時間数(施行規則38条4項・5項)
警備業法第21条第2項に基づく教育義務について、2026年時点の施行規則が定める時間数は、資格・経験の有無によって次のように変わります。
| 対象者の状態 | 新任教育(基本+業務別) | 現任教育(毎年度・基本+業務別) |
|---|---|---|
| 未経験・無資格の一般警備員 | 合計20時間以上 | 合計10時間以上 |
| 最近3年間に2号業務に通算1年以上従事(経験者) | 合計7時間以上 | 合計10時間以上 |
| 他区分での経験・元警察官(通算1年以上) | 合計13時間以上 | 合計10時間以上 |
| 2号の検定合格証明書を保有し2号業務に従事 | 新任・現任とも免除 | 免除 |
| 他区分の検定・指導教育責任者資格を保有 | 業務別のみ10時間以上(経験者は3時間) | 業務別のみ6時間以上 |
この表は施行規則38条4項の表(新任)・5項の表(現任)を2号業務向けに整理したものです。自社の警備員がどの行に当たるか、資格者証・検定合格証明書の有無から確認してください。自社の状況を入力してどの区分に当たるか・不足している時間数はどれだけかを確認したい方は、教育時間チェッカーで判定できます。
実地教育による代替は新任教育のみ、上限は「2分の1」と「上限時間」の少ない方
新任教育の業務別教育部分は、実地教育(現場でのマンツーマン指導)で一部代替できます(施行規則38条3項備考)。上限は「業務別教育時間の2分の1」と「決められた上限時間(経験等に応じ2時間または5時間)」のうち、少ない方です。
例えば、2号業務の新任教育を基本教育8時間+業務別教育12時間=合計20時間で計画した一般警備員の場合、実地代替の上限は「12 ÷ 2 = 6時間」と「5時間」を比較し、少ない方の5時間までです。残り7時間分の業務別教育は、講義・実技訓練として別途実施し、記録する必要があります。なお、現任教育(毎年度10時間以上)にはこの実地代替の規定は適用されません。新任と現任を同じ発想で記入してしまう取り違えが起きやすいポイントです。
実地教育を実施できるのは、業務区分に応じた指導教育責任者、国家公安委員会が定める同等の知識経験を持つ者、または2年以上継続して当該業務に従事している警備員です(警視庁の案内で確認)。実施簿の「実施者の氏名」欄には、この条件を満たす人物の氏名を記入します。
実際の記入作業では、38条の教育事項が行に並んだ状態で出力できる教育実施簿テンプレートを使うと、実施年月日・時間数・実施者・受講した警備員を書き足すだけで形式を満たせます。自作の様式だと確認欄の付記を見落としがちなので、テンプレートの該当欄をそのまま使うのが安全です。
自社で確認・対応する手順
- 対象警備員の資格を確認する:2号の検定合格証明書・指導教育責任者資格者証の有無と区分、過去3年の従事経験、警察官歴を洗い出します。
- 教育計画書で時間配分を決める:上の表で該当する時間数の合計を、基本教育・業務別教育にどう配分するかを計画書に記載します(教育計画書テンプレート)。
- 教育を実施し、都度実施簿に記入する:年月日・内容・方法・時間数・場所・実施者・対象警備員を記入し、指導教育責任者と実施者の確認欄に記名します。
- 警備員名簿にも反映する:実施年月日・内容・時間数・実施者氏名を名簿にも記載します(施行規則66条1項1号ロ)。
- 年度ごとの累計を隊員別に確認する:現任教育は在籍する警備員1人ずつ年度内合計が基準(例:10時間以上)に達しているかを突き合わせます。
- 2年間保管する:教育計画書・教育実施簿は、当該年度が終了した日から2年間、営業所に備え付けます(施行規則66条2項)。
注意点・誤解しやすいポイント
- 実地代替は新任限定:現任教育に実地代替の規定を当てはめてしまう誤解が多く見られます。現任は毎年度10時間以上を講義・実技訓練で実施する必要があります。
- 「免除」と「軽減」の違い:2号の検定合格証明書を持ち2号業務に就く場合は教育そのものが免除ですが、他区分の資格を持つ場合は「業務別のみ・時間短縮」にとどまり、免除ではありません。条件を取り違えると記録不足になります。
- 隊員別の累計管理:実施簿は1回の教育ごとの記録ですが、立入検査では警備員1人あたりの年度累計が問われます。現任教育10時間×在籍5名=延べ50時間分の実施記録が、年度内に積み上がっている状態を作っておく必要があります。
- 確認欄の省略:記載事項そのものは埋まっていても、指導教育責任者・実施者の確認の付記がない様式は要件を満たしません。
- 紙でなくてもよい:施行規則67条により、記載事項が電磁的方法で記録され、必要に応じて直ちに表示できれば、紙の実施簿に代えられます。クラウドでの管理も認められています。
細かな運用は営業所の所在地によって確認窓口や運用の細部が異なることがあるため、詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。
教育計画と実績の記録、不足している警備員の自動アラートまでまとめて管理したい場合は、クレジットカード不要の14日間無料トライアルで試すこともできます(無料で試す)。
まとめ
- 2号業務の教育実施簿には、実施年月日・内容・方法・時間数・場所・実施者氏名・対象警備員氏名の7項目+確認欄の付記が必須(施行規則66条1項6号)
- 業務別教育の教育事項は道路交通関係法令・誘導方法・雑踏整理など6項目(施行規則38条3項の表)
- 時間数は新任教育7〜20時間、現任教育6〜10時間が基準で、検定・指導教育責任者資格の有無で変わる
- 実地教育による代替は新任教育の業務別教育部分のみ、「2分の1」と「上限時間」の少ない方まで
- 教育計画書・教育実施簿は年度終了から2年間の保管が必要、電磁的記録でもよい
まずは自社の警備員がどの時間数区分に当たるかを教育時間チェッカーで確認し、教育実施簿テンプレートで記入を始めるのが実務上の近道です。
よくある質問
Q. 交通誘導警備と雑踏警備は同じ業務別教育でよいですか?
どちらも警備業法上の2号業務(交通誘導警備業務・雑踏警備業務)に当たり、施行規則38条3項の表では同じ業務別教育事項(道路交通関係法令、誘導方法、雑踏整理など)が適用されます。実施簿上も2号業務として一本化して記録して問題ありません。
Q. 実地教育だけで新任教育を完結させてもよいですか?
できません。実地教育で代替できるのは業務別教育の一部(「2分の1」と「上限時間」の少ない方)までで、残りの業務別教育と基本教育は講義・実技訓練など別の方法で実施する必要があります(施行規則38条3項備考)。
Q. 現任教育の10時間に実地教育を充てることはできますか?
施行規則38条5項の現任教育には、新任教育のような実地代替の規定がありません。毎年度の現任教育は、原則どおり講義・実技訓練等で実施し記録してください。不明な点は管轄の公安委員会に確認するのが確実です。
Q. 教育実施簿はいつまで保管すればよいですか?
当該年度が終了した日から2年間です(施行規則66条2項)。教育計画書も同様に2年間の備付けが必要です。
Q. 検定合格証明書があれば必ず教育は不要になりますか?
従事させる業務と同じ種別・区分の検定合格証明書(1級または2級)を保有している場合に限り、新任教育・現任教育のいずれか、または両方が免除・軽減されます。別の区分の検定である場合は免除にならず、業務別教育のみ時間短縮という扱いになります(施行規則38条4項・5項柱書)。