施設警備の教育実施簿、業務別教育欄に何を書けばいいか迷ったら
「1号業務(施設警備)の教育実施簿を作ることになったが、業務別教育の欄に具体的に何を書けばいいのか分からない」——巡回や出入管理を担う施設警備の現場を持つ営業所で、指導教育責任者や採用担当者から特によく聞く悩みです。基本教育の項目はイメージできても、業務区分ごとに変わる業務別教育の中身までは条文を読まないと分かりません。
結論から言うと、施設警備(1号業務)の業務別教育欄は、警備業法施行規則第38条第3項の表「法第2条第1項第1号の警備業務」の項が定める5つの教育事項から記入します。この記事では、その5項目の内容と、新任・現任それぞれの記入例、実地教育で代替する場合の時間数の計算まで、具体的な数字とともに示します。
結論:1号業務の業務別教育欄は5項目から選んで書く
施行規則38条3項の表は、警備業務の区分ごとに教育事項を定めています。施設警備が含まれる「法第2条第1項第1号の警備業務(機械警備業務を除く)」の項に挙げられているのは、次の5項目です。
| 記号 | 教育事項 |
|---|---|
| イ | 警備業務対象施設における人又は車両等の出入の管理の方法に関すること |
| ロ | 巡回の方法に関すること |
| ハ | 警報装置その他当該警備業務を実施するために使用する機器の使用方法に関すること |
| ニ | 不審者又は不審な物件を発見した場合にとるべき措置に関すること |
| ホ | その他当該警備業務を適正に実施するため必要な知識及び技能に関すること |
教育実施簿の「教育の内容」欄には、この5項目のうちその日に行った内容を具体的に書きます(例:「巡回の方法に関すること/館内巡回ルートの確認と異常発見時の初動」)。「その他」欄しか使わない書き方だと、立入検査で「何を教えたか分からない」と指摘されやすいため、できるだけイ〜ニのどれに当たるかを明示するのが実務上安全です。
新任・現任で変わる時間数(1号業務の記入例つき)
業務別教育の内容が分かっても、時間数は警備員ごとの経験・資格によって変わります。施行規則38条4項(新任教育)・5項(現任教育)を整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 教育の種類 | 時間数 | 実地教育の代替上限 |
|---|---|---|---|
| 新任・未経験(原則) | 基本教育+業務別教育 | 20時間 | 業務別時間の2分の1または5時間の少ない方 |
| 新任・同一区分で1年以上の実務経験あり | 基本教育+業務別教育 | 7時間 | 業務別時間の2分の1または2時間の少ない方 |
| 新任・他区分の実務経験または警察官経験1年以上 | 基本教育+業務別教育 | 13時間 | 業務別時間の2分の1または5時間の少ない方 |
| 現任・原則(毎年度) | 基本教育+業務別教育 | 10時間 | — |
| 現任・検定2級該当または資格を他区分で保有 | 業務別教育のみ | 6時間 | — |
現任教育の「毎年度」は4月1日から翌年3月31日までを指します。1級検定合格者やこの区分の指導教育責任者資格者証を持つ警備員は、施行規則38条4項・5項の柱書により、その区分の警備業務に従事させる限り教育そのものが不要です。
自社の施設警備スタッフがどの区分に当たるか一人ずつ確認したい場合は、実施簿を書き始める前に教育実施簿テンプレートで年度・区分を選ぶと、38条の教育事項が並んだ記入用の様式をそのまま出力できます。
施設警備の教育実施簿 記入例
上の5項目・時間数を踏まえた記入例は次のようになります。
| 記載事項 | 新任教育の記入例 | 現任教育の記入例 |
|---|---|---|
| 実施年月日 | 2026年5月10日 | 2026年10月3日 |
| 教育の内容 | ハ 警報装置その他機器の使用方法に関すること(館内センサー・防犯カメラの操作) | ニ 不審者又は不審な物件を発見した場合にとるべき措置に関すること |
| 実施方法 | 講義+実技訓練 | 実地教育(現場随行) |
| 時間数 | 3時間 | 1時間 |
| 実施場所 | 〇〇ビル 管理事務室 | △△施設 警備室(現場) |
| 実施者の氏名 | 指導教育責任者 山田太郎 | 現場責任者 佐藤次郎 |
| 対象警備員の氏名 | 田中健二 | 田中健二 |
| 確認欄 | 指導教育責任者印・実施者印 | 指導教育責任者印・実施者印 |
「対象警備員の氏名」を個人名で毎回記載することと、確認欄を空欄のまま残さないことがポイントです。施行規則66条1項6号は、指導教育責任者と実施者が「記載事項に誤りがないことを確認する旨」を付記するよう求めており、確認欄の記入漏れは記載事項自体が揃っていても要件を満たしません。
実地教育で代替する場合の時間数の計算
現場に付き添わせる形の実地教育は、業務別教育の時間の一部を代替できますが、上限を超えて記帳すると記録上は基準未達のままです。たとえば新任・同一区分で1年以上の実務経験がある警備員(区分の合計7時間のうち、教育計画で業務別教育を5時間と定めた場合)では、実地教育の上限は「5時間 ÷ 2 = 2.5時間」を端数処理し、30分以上1時間未満の端数は1時間に切り上げるため3時間、これと定められた上限の2時間を比べて少ない方、つまり2時間までしか実地教育に置き換えられません(施行規則38条3項備考)。実施簿には「実地教育(現場随行)」と方法を書き、代替した実時間(この例では2時間まで)を時間数欄に記載します。
新規採用が続く時期は、記録する量も増えます。施設警備で未経験の新任警備員を3名採用した場合、「20時間 × 3名 = 延べ60時間分」の新任教育の実施記録を、各人の従事開始までに積み上げる必要があります。1名でも記入漏れがあると、その警備員だけ法定時間に届かないまま現場に立たせてしまうことになりかねません。
自社の実施簿を確認・作成する手順
まず、施設警備スタッフごとに新任教育・現任教育のどちらが必要な状態か、経験年数や検定・指導教育責任者資格の有無を洗い出します。次に、該当する区分の時間数を確認し、年度内にいつ・どの項目(イ〜ホ)を・何時間行うかの教育計画を先に組んでおきます。教育を実施したら、その都度、実施年月日・内容・方法・時間数・場所・実施者・対象警備員を実施簿に記帳し、指導教育責任者と実施者が確認欄に記名・押印します。あわせて警備員名簿の教育欄にも同じ内容を転記し、実施簿と名簿の記載にずれがないようにします。年度末が近づいたら、施設警備スタッフ一人ひとりの年間合計時間が基準(新任なら区分に応じた時間数、現任なら原則10時間)に届いているかを点検します。
記入時に誤解しやすいポイント
「業務別教育は現場での立ち話でも成立する」と考えられがちですが、備考が定める実地教育の上限(業務別時間の2分の1または規定時間数の少ない方)を超える分は、講義や実技訓練など別の方法で補う必要があります。また、教育実施簿の保存期間を「実施した日から2年」と誤解するケースがありますが、正しくは施行規則66条2項により当該年度が終了した日から2年間です。検定合格者は一律で教育が免除されると思われがちですが、実際には検定の級と従事させる業務区分が同一かどうかで扱いが変わり、施設警備の2級検定合格者は現任の業務別教育6時間がなお必要です。個々の区分の当てはめに迷う場合は、詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。
なお、実施簿は紙の帳簿である必要はありません。施行規則67条により、記載事項が電磁的方法で記録され、必要に応じてすぐに画面表示・印刷できる状態であれば書面の代わりとして認められます。施設警備スタッフごとの年間累計時間と不足を自動でチェックできるようにしておくと、記入漏れや確認欄の付け忘れに早く気づけます。14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)でこの仕組みを試せますので、記帳の手間を減らしたい方は無料トライアルを確認してみてください。
実際に記入してみたい方は、教育実施簿テンプレートで年度・区分(1号業務)を選ぶと、上記の5項目と記載事項の列を埋め込んだ記入用の白紙様式をエクセル・印刷で出力できます。
まとめ
- 施設警備(1号業務)の業務別教育欄は、施行規則38条3項の表が定める5項目(出入管理・巡回・警報装置等の使用方法・不審者対応・その他)から具体的に記入する
- 時間数は経験・資格で変わる(新任は原則20時間、経験者は7時間や13時間、現任は毎年度10時間が原則)
- 実地教育での代替は「業務別教育時間の2分の1」と規定の上限時間数のいずれか少ない方まで(端数は30分以上1時間未満で切り上げ)
- 教育実施簿の保存期間は当該年度終了日から2年間、電磁的記録(クラウド管理)でも代替可能
- 記入前に教育実施簿テンプレートで様式を確認し、区分ごとの時間数に迷う場合は管轄の公安委員会や社会保険労務士に相談する
よくある質問
Q. 施設警備(1号業務)の業務別教育で、何を教えればよいですか?
施行規則38条3項の表「法第2条第1項第1号の警備業務」の項が定める5項目(出入管理の方法、巡回の方法、警報装置等の使用方法、不審者・不審物発見時の措置、その他必要な知識及び技能)から、実際に行った内容を教育実施簿に記入します。
Q. 業務別教育の一部を実地教育(現場随行)で代替できますか?
できます。ただし上限があり、教育計画上の業務別教育時間数の2分の1(端数は30分以上1時間未満で切り上げ、30分未満は切り捨て)または区分ごとに定められた時間数(5時間・2時間など)のいずれか少ない方までです(施行規則38条3項備考)。
Q. 新任教育と現任教育で、教育実施簿の書き方は変わりますか?
記載する7項目(実施年月日・内容・方法・時間数・場所・実施者氏名・対象警備員氏名)と確認欄は共通です。異なるのは時間数の基準で、新任は原則20時間以上(経験や資格により軽減あり)、現任は毎年度10時間以上(原則)です。
Q. 教育実施簿は何年保管する必要がありますか?
施行規則66条2項により、当該年度が終了した日から2年間です。教育計画書も同じく2年間の備付けが必要で、指導計画書だけは起算点が異なり実地に指導した日から2年間となります。
Q. 検定2級を持つ施設警備スタッフでも、業務別教育は必要ですか?
必要です。2級検定合格者は現任教育の業務別教育(6時間)が引き続き必要で、免除されるのは1級検定合格者が同一区分の業務に従事する場合などに限られます。個別の判定に迷う場合は管轄の都道府県公安委員会や顧問の社会保険労務士にご確認ください。