罰則・行政処分

警備員教育を怠るとどうなる?指示・営業停止などの行政処分と罰則

運営・編集:ケイビログ編集部

🔧 この記事に関連するツール

教育時間チェッカーで必要時間を確認する

警備員教育を怠ると何が起きるのか――行政処分と罰則の全体像

「忙しくて教育記録が追いつかない」「自社の教育時間が法定要件を満たしているか自信がない」――そんな状況で警察の立入検査の通知が来たとき、何が待ち受けているのでしょうか。この記事では、教育義務を怠った場合に課される行政処分と刑事罰の仕組みを、警備業法の条文と国家公安委員会の処分基準に沿って具体的に解説します。

結論から言うと

結論から言うと、警備員教育を怠ると「指示処分」「営業停止命令」「認定取消し」という行政処分が段階的に課されます。さらに、営業停止命令を無視して営業を続けると1年以下の懲役または100万円以下の罰金(刑事罰)が待っています。教育実施簿の虚偽記載や備付け義務違反だけでも30万円以下の罰金の対象です。「立入検査が来ていない」「まだ指摘されていない」は安全を意味しません。

警備業法が定める教育義務とその時間数

警備員教育の義務は警備業法第21条に根拠があります。同条第2項では「警備業者は、その警備員に対し、内閣府令で定めるところにより教育を行わなければならない」と定めており、具体的な時間数・方法は警備業法施行規則第38条に規定されています(2026年時点)。

教育区分対象時間数(基本教育+業務別教育)
新任教育(施行規則38条4項)警備業務に就かせる前合計20時間以上
現任教育(施行規則38条5項)毎年度(4月1日〜翌3月31日)合計10時間以上

実地教育で業務別教育を代替できる上限は業務別教育時間数の2分の1までです(施行規則38条3項)。たとえば業務別教育を6時間実施する場合、実地教育に振り替えられるのは 6 ÷ 2 = 3時間まで。残り3時間は講義・訓練等で実施しなければなりません。

なお、1級検定合格者をその種別の業務に従事させる場合は現任の業務別教育が免除されます。2級合格者は区分によって現任の業務別教育時間が軽減される場合があります。警備員指導教育責任者資格者証保有者も同様に免除区分があります。詳しくは管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。

自社の警備員が法定要件を満たしているか区分・資格別に確認したい方は、教育時間チェッカーをご活用ください。新任・現任の区分や保有資格を入力するだけで法定時間との過不足を確認できます。

教育未実施が発覚したときの行政処分の流れ

ステップ1:指示処分(警備業法第48条)

都道府県公安委員会は、警備業者や警備員が警備業法等に違反したとき、「指示」を行うことができます(警備業法第48条)。指示は「是正してください」という警告的な処分ですが、公安委員会の記録に残り、以降の処分が加重される起算点になります。また、指示処分に従わない場合は100万円以下の罰金(警備業法第57条)の対象となります。

ステップ2:営業停止命令(警備業法第49条)

指示に従わない場合や違反の程度が重大な場合は、営業停止命令(警備業法第49条)が下されます。国家公安委員会が示すモデル処分基準では、教育を受けた警備員の割合に応じて次のように段階が定められています。

教育実施の割合(教育を受けた者の比率)処分の目安
90%以上指示処分
70%以上90%未満7日間の営業停止
50%以上70%未満14日間の営業停止
50%未満1か月の営業停止

たとえば警備員10名のうち4名の教育記録が不足していれば(実施率60%)、14日間の営業停止が想定されます。さらに過去に処分歴がある場合は、停止期間が加重されることがあります。

ステップ3:認定取消し(警備業法第8条)

繰り返し違反を行った場合や悪質なケースでは、警備業者としての認定そのものが取り消されます。認定を取り消された警備業者は5年間、再認定を受けられないため、事実上の廃業を意味します。

行政処分の事例は警視庁の行政処分公表ページで確認できます。各都道府県警察も同様に公表しており、処分から3年間は公表され続けます。

刑事罰(罰金・懲役)が科されるケース

行政処分とは別に、以下の行為では刑事罰が科されます。

営業停止命令に違反して営業を続けた場合(警備業法第56条) 1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科され、懲役と罰金の併科も可能です。「停止命令が出たが、現場を止められない」という状況でも、違反すれば刑事事件になります。

指示処分に従わない場合・指導教育責任者を選任しない場合など(警備業法第57条) 100万円以下の罰金の対象となります。

教育実施簿・教育計画書の備付け義務違反・虚偽の記載(警備業法第58条) 書類を備え付けない、必要事項を記載しない、または虚偽を記載した場合は30万円以下の罰金です。「記録はあるが時間数を水増ししている」という状態も該当します。

立入検査で確認される書類と準備事項

都道府県警察は年1回程度の立入検査を実施し、法定備付書類の整備状況を確認します。主な確認対象は次のとおりです。

教育計画書(施行規則第66条第3項):各年度(教育期)の開始日の30日前までに営業所に備え付ける義務があります。教育期終了後2年間保存。

教育実施簿(施行規則第66条第1項第6号・同条第2項):教育を実施したその都度、実施年月日・内容・方法・時間数・実施場所・実施者氏名・対象警備員氏名を記録します。教育期終了後2年間保存。

警備員名簿(施行規則第66条第1項第1号):在籍する警備員の基本情報・採用日・新任教育完了日・保有資格等を記録します。

計算例を挙げると、「現任教育10時間×在籍警備員8名=延べ80時間分の実施記録」が年度内に必要です。記載内容が実態と一致しない記録が1件でも見つかれば、指示処分の対象になりえます。

自社でできる確認・対応手順

  1. 今年度の現任教育の進捗を確認する:年度末(3月31日)が締切。残り月数と未実施の警備員数を把握し、必要な実施計画を組む。
  2. 教育実施簿の記載内容を点検する:時間数の合計・実施者名・受講者名に漏れがないか、全員分を通しで確認する。
  3. 教育計画書の備付け状況を確認する:今年度の計画書が4月1日の30日前(3月2日ごろ)に作成・備付けされているか確認する。
  4. 新任教育の記録を確認する:新規採用者の「現場配置日」と「新任教育完了日」を突き合わせ、就業前に20時間を完了しているか確認する。
  5. 保存書類の状態を確認する:過去2年分の教育計画書・教育実施簿が取り出せる状態にあるか確認する。

教育記録をクラウドで一元管理したい方には、ケイビログの無料トライアル(14日間・クレジットカード不要)もひとつの選択肢です。警備員ごとの累積教育時間と法定必要時間の過不足をダッシュボードで確認できます。

誤解しやすいポイント

「立入検査が来なければ大丈夫」は誤りです 行政処分の端緒は立入検査だけではありません。退職した警備員や取引先からの申告・通報も起点になります。検査頻度が低い地域でも、違反状態を放置すればリスクは積み重なります。

「指示処分は軽い」という誤解 指示処分に従わないと100万円以下の罰金(第57条)の対象となります。また処分歴として記録に残るため、次の違反では営業停止期間が加重されます。

「記録があれば問題なし」ではありません 教育実施簿の記載内容が実態と異なる(時間数の水増し等)と、30万円以下の罰金(第58条)の対象になります。「とりあえず書いてある」という状態が逆にリスクになることがあります。

「保存期間は3年」という誤解 教育実施簿・教育計画書の保存期間は、当該教育期が終了した日から2年間です(施行規則第66条第2項)。警備員名簿等の他の書類と混同するケースがありますが、教育関係書類は2年が正しい数字です。

自社の法定時間の充足状況を改めて確認したい方は、教育時間チェッカーで現任・新任の過不足を確認してみてください。

まとめ

  • 警備業法第21条・施行規則第38条が教育義務の根拠。新任は業務就業前に20時間以上、現任は毎年度10時間以上(基本教育+業務別教育の合計)が必要
  • 教育未実施は割合に応じて「指示処分」「7日・14日・1か月の営業停止」「認定取消し(廃業)」と段階的に処分が重くなる
  • 営業停止命令を無視して営業を続けると1年以下の懲役または100万円以下の罰金(刑事罰)が科される
  • 教育実施簿の虚偽記載・備付け義務違反だけでも30万円以下の罰金の対象になる
  • 教育計画書・教育実施簿は教育期終了後2年間保存が義務。立入検査では実施と記録の両方を確認される

警備業法・施行規則は改正されることがあります。最新の条文はe-Gov法令検索で確認し、個別の適用判断については管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認ください。

よくある質問

Q. 新任教育を完了する前に警備業務に就かせてしまった場合、どのような処分になりますか?

新任教育(施行規則第38条第4項)は「警備業務に就かせる前」に完了しておくことが原則です。就業前に教育を完了しないで業務に従事させた場合、警備業法第21条違反として指示処分または営業停止処分の対象になります。発覚経路は立入検査のほか、退職した警備員からの申告も考えられます。採用後は業務開始日と新任教育完了日を必ず記録し、「教育完了→現場配置」の順序を社内ルールとして徹底することが重要です。

Q. 現任教育の時間数が年度内に足りないまま年度末を過ぎてしまったら、翌年度に持ち越せますか?

持ち越すことはできません。年度単位で教育義務が完結する仕組みのため、当該年度中に未実施だった分は義務違反のまま確定します。翌年度の教育とは別に扱われます。年度末が近い時期に時間数が不足していることに気づいた場合は、集中的な教育実施と教育実施簿への記録を急ぐことが先決です。年度内の実施が難しい場合は、管轄の警察本部生活安全部局に相談することを検討してください。

Q. 教育実施簿をまとめて後日記入することはできますか?

教育を行った都度、その実施日・時間数・内容・実施場所・実施者・受講者を記録することが原則です。複数回の教育を後日まとめて1件として記録すると、実態と合致しない記載として「虚偽の記載」とみなされるリスクがあります(警備業法第58条・30万円以下の罰金)。教育実施後すみやかに記録する習慣の徹底が、立入検査対策としても最も確実です。

Q. 小規模な警備会社でも立入検査の対象になりますか?

規模に関係なく、認定を受けた警備業者はすべて立入検査の対象です。むしろ小規模事業者ほど専任の管理担当者を置きにくく、教育計画書の作成・教育実施簿の整備が後手に回りがちです。月次の自己チェック(教育進捗・書類の整備状況の確認)を習慣化することが有効です。

Q. 行政処分(営業停止)を受けると、取引先への影響はありますか?

都道府県公安委員会による営業停止処分は公表されます(警視庁等、各都道府県警察のサイトで閲覧可能)。公表期間は処分日から3年間です。警備業では発注先が入札資格審査で処分歴を確認するケースもあり、処分が受注停止や契約打ち切りにつながった事例もあります。処分が公表されること自体が、取引先・発注元との信頼関係を大きく損なうリスクがあります。

この記事の内容をツールで確かめる

教育時間チェッカーで必要時間を確認する

参考にした一次情報

関連記事