令和元年の改正で何が変わったのか
「採用した隊員に何時間の教育が必要か、古い資料と数字が違う気がする」——そう感じたことのある警備会社の担当者は少なくありません。2019年(令和元年)8月30日に警備業法施行規則が改正され、新任・現任ともに教育時間数の枠組みが大きく刷新されています。旧制度の数字のまま運用すると立入検査で指摘を受けるリスクがあるため、改正の新旧対比を正確に把握しておくことが重要です。
結論から言うと:新任は30時間から20時間、現任は16時間から10時間に
2026年時点の警備業法施行規則第38条が規定する教育時間は、一般の警備員(資格・経験による軽減に当たらない者)について次のとおりです。
- 新任教育:基本教育+業務別教育を合わせて 20時間以上(従来:30時間以上)
- 現任教育:毎年度(4月1日〜翌3月31日)基本教育+業務別教育を合わせて 10時間以上(従来:年間16時間以上)
この差は大きく、もし旧制度の数字を引き続き使っているなら、実態は法定を超える教育を課していることになります(過剰コスト)。逆に旧制度で計算した「16時間÷2期=8時間」という中間目標を設定していると、改正後は足りていないケースにはなりません。いずれにせよ、現行規則に照らした運用への切り替えが必要です。
新旧比較表(令和元年8月30日改正)
改正前と改正後を並べると次のとおりです。根拠は警備業法施行規則38条および警視庁「警備員に対する教育時間」です。
| 区分 | 改正前(〜令和元年8月29日) | 改正後(令和元年8月30日〜) |
|---|---|---|
| 新任教育(一般) | 基本教育15時間以上+業務別教育15時間以上=30時間以上 | 基本教育+業務別教育を合計して20時間以上 |
| 現任教育(一般) | 教育期(6か月)ごとに基本3時間+業務別5時間=年間16時間以上 | 毎年度(年1回)に基本+業務別を合計して10時間以上 |
| 現任教育の区切り | 半期制(前期:4〜9月、後期:10〜3月) | 年度制(4月1日〜翌3月31日) |
| 実地教育の代替上限 | 業務別教育の2分の1かつ5時間以内 | 業務別教育の2分の1または5時間のいずれか少ない方(区分により異なる) |
改正の背景には、警備業の人手不足と教育負担の軽減があります。従来の計30時間・半期ごとの区切りは、急増する需要に対して採用・教育のコストが重くなりすぎるという課題があり、2019年の規則改正でより柔軟な運用ができる形に整理されました。
現行(改正後)の区分別教育時間
一般の警備員が20時間(新任)・10時間(現任)である一方、資格・経験によって時間が軽減されます。施行規則38条4項(新任)・5項(現任)の表を整理すると次のとおりです。
新任教育の区分別早見表
| 区分(施行規則38条4項の表) | 教育の種類 | 必要時間 |
|---|---|---|
| 1項:一般(資格・経験なし) | 基本+業務別 | 20時間 |
| 7項:別区分経験者または元警察官(通算1年以上) | 基本+業務別 | 13時間 |
| 6項:同じ区分の業務に直近3年で通算1年以上従事 | 基本+業務別 | 7時間 |
| 2項:他種別の検定合格者・他区分の指導教育責任者 | 業務別のみ | 10時間 |
| 3項:↑ かつ同じ区分に直近3年で通算1年以上従事 | 業務別のみ | 3時間 |
| 4項:機械警備業務管理者(機械警備に就かせる場合) | 基本のみ | 10時間 |
| 5項:↑ かつ経験1年以上または元警察官1年以上 | 基本のみ | 3時間 |
| 柱書適用除外:同じ種別の検定合格者・同じ区分の指導教育責任者 | 免除 | 0時間 |
現任教育の区分別早見表
| 区分(施行規則38条5項の表) | 教育の種類 | 必要時間 |
|---|---|---|
| 1項:一般 | 基本+業務別 | 10時間 |
| 2項:2級検定合格者(同じ種別または別種別)・他区分の指導教育責任者等 | 業務別のみ | 6時間 |
| 柱書適用除外:1級検定合格者(同じ種別)・同じ区分の指導教育責任者 | 免除 | 0時間 |
自社の隊員がどの区分に当たるかは、資格・経歴を選ぶだけで判定できる教育時間チェッカーを使うと、表を読み解く手間なく確認できます。
計算例:実地教育代替と人員規模別の必要時間
改正後の規則では、業務別教育の一部を実地教育(OJT)で代替できます。ただし上限が決まっている点に注意が必要です。
計算例1:実地教育代替の上限
一般の新任教育(20時間)で、教育計画上の業務別教育を6時間と設定した場合、実地教育で代替できるのは:
6時間 ÷ 2 = 3時間(業務別の2分の1)または5時間のうち少ない方
よってこのケースでは最大3時間まで実地代替が認められ、残り3時間は座学等で実施する必要があります(規則38条3項備考1号)。
計算例2:現任教育の年間延べ時間
2号警備(交通誘導)に従事する一般の警備員が10名いる場合、現任教育は1人あたり毎年度10時間以上が必要です。
10時間 × 10名 = 延べ100時間分の教育実施記録が必要になります。
年度末にまとめて消化しようとすると、繁忙期と重なって未達になるリスクが高まります。年度当初の教育計画書に四半期ごとの実施スケジュールを入れておくことで、こうしたリスクを抑えられます。
自社で確認すべき3つのポイント
改正後の規則に照らして、次の順に確認してください。
① 現在使っている教育時間の基準が旧制度ではないか
社内マニュアルや教育計画書の雛形に「新任30時間」「半期ごとに8時間」といった旧制度の数字が残っていないか確認します。令和元年改正後に社内資料を更新していない場合、古い時間数をそのまま使っているケースがあります。
② 隊員ごとに「どの区分」に当たるか把握できているか
検定資格の有無・級・業務種別、経験年数、警察官歴など、必要な情報を台帳に整理します。同じ「検定持ち」でも、就かせる業務と資格の種別が一致するかどうかで結論が変わるため、個別に判定が必要です。
③ 教育実施記録(教育実施簿)が現行様式で整備されているか
改正によって教育期の区切りが半期から年度に変わっているため、旧様式で半期ごとに記録を作っている場合は様式を見直す必要があります。教育実施簿の保存期間は年度終了後2年間です(警備業法施行規則45条)。
まず隊員ごとの必要時間を把握したい場合は、教育時間チェッカーで区分・資格・経験を選択して確認してください。教育計画の作成も含めてクラウドで管理したい場合は、カード不要の14日間無料トライアルからお試しいただけます。
誤解しやすいポイント
「現任教育は半期に1回やればいい」は旧制度の考え方
改正前は前期(4〜9月)・後期(10〜3月)それぞれに最低8時間の教育が必要でした。現行は年度単位で10時間の合計を確保すればよく、実施時期の柔軟性は上がっています。ただし「一度にまとめて10時間こなせばよい」という意味ではなく、年度内に計画的に分散して実施することが推奨されます。
「2級検定を持っていれば現任教育が免除」は誤り
2級検定合格者(同じ種別に従事)の場合は免除ではなく、業務別教育が6時間に軽減されます(施行規則38条5項の表2項)。免除が認められるのは、1級検定合格者をその種別の業務に従事させている場合または指導教育責任者資格者証の区分と同じ業務に従事させている場合に限られます(同条項柱書)。
「実地教育で業務別はすべて代替できる」は誤り
業務別教育を全時間実地代替することはできません。実地教育による代替には上限があり、一般の場合は「業務別教育の計画時間数の2分の1または5時間のうち少ない方」が上限です(規則38条3項備考1号)。基本教育は実地代替の対象外です。
個別の判定に不安がある場合は、管轄の都道府県公安委員会(警察本部の生活安全部局)や顧問の社会保険労務士にご確認いただくことをお勧めします。
まとめ
- 令和元年(2019年)8月30日施行の改正で、新任教育は30時間→20時間(基本+業務別の合計)に、現任教育は16時間→10時間(年度単位)に変わった
- 現任教育の区切りも半期制から年度制に変更されており、旧様式・旧数字のまま運用していないか確認が必要
- 資格・経験によって時間が軽減または免除される区分があり、「1級検定で同種別に就かせる場合は現任免除」「2級は業務別6時間に軽減」など組み合わせで結論が変わる
- 業務別教育の一部は実地教育で代替できるが、上限は業務別時間数の2分の1または5時間の少ない方(一般の場合)
- 改正後の条文はe-Gov法令検索の施行規則で常に最新版を確認し、将来の改正にも備えておく
よくある質問
Q. 警備業法施行規則の教育時間はいつ改正されましたか?
令和元年(2019年)8月30日に公布・施行されました。この改正で新任教育は30時間以上から20時間以上に、現任教育は年間16時間以上(半期ごと)から毎年度10時間以上(年度ごと)に変更されています(施行規則38条)。
Q. 改正前の旧制度で「基本15時間+業務別15時間」と学んだが、現在も有効ですか?
現行規則では「基本+業務別の合計20時間以上」に変わっているため、旧制度の枠組みはすでに廃止されています。旧時間数を定めたマニュアルや教育計画書が社内に残っている場合は、現行規則に沿って更新が必要です。
Q. 現任教育10時間のうち、基本教育と業務別教育はそれぞれ何時間必要ですか?
施行規則38条5項は「基本教育・業務別教育を合わせて10時間以上」と合計で定めており、それぞれの最低時間は固定されていません。10時間という総枠の中で教育計画書に配分を定め、両方を実施する形になります(施行規則38条、警視庁)。
Q. 現任教育の免除を受けるには何が必要ですか?
就かせている警備業務と同じ種別の1級検定合格証明書を持っているか、同じ区分の警備員指導教育責任者資格者証を持っている場合に限り、現任教育が免除されます(施行規則38条5項柱書)。2級検定では免除されず、業務別教育6時間が必要です。詳しい判定は教育時間チェッカーをご活用ください。
Q. 立入検査では教育時間数のどの部分が確認されますか?
教育実施簿(実施日・教育内容・実施時間数・受講者名等を記録したもの)と教育計画書が確認の対象です。旧制度の半期ごとの様式で記録を作成していると、現行の年度単位の管理と整合しない場合があるため注意が必要です。詳しくは管轄の公安委員会(警察本部の生活安全部局)にご確認ください。